吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

スプリット

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 レイトショーで次男S(24歳)と一緒に鑑賞。
 ナイトシャマランらしい作品だ。スプリットは分裂とか分離という意味で、この映画の主人公である解離性同一性障害の男を指している。しかし解離性障害の人間を殺人鬼として描いてしまうと、またまた偏見が増えるのではないか。先日見たばかりの「リミットレス」でも主人公は脳を覚醒させてフル回転していたが、あながちSFではなく、統合失調症や解離性の患者の脳内は常人では考えられないほど活性化しているらしい。普通は眠っている脳細胞が働いて妄想や幻聴が聞こえ、解離性障害では別人格が別の病気に罹ったりするという信じられないことも起きる。人間の脳というのは不思議なもので、まだまだわからないことは多いのだろう。
 さて、本作ではジェームズ・マカヴォイの多重人格演技がすごすぎて怖かった。こんな人、実際に目の間に居たらどんだけ怖いねん。監禁されている少女3人とジェームズ・マカヴォイの4人芝居かと思ったら、意外と他の重要人物も外部で動くので退屈はしない。それから、主人公の少女が幼い頃から叔父に虐待されて生きてきたことがわかる回想シーンの重ね方が秀逸で、そこがナイト・シャマランの凡庸ではないところだと感心した。
 最後に、少女たちが監禁されていた場所がどこなのかがわかると驚いた。なんと、そんなところに! さらにラストシーンには思わず笑ってしまったが、映画を見終わったあと、Sと二人で「あれは何かの映画が元ネタになってるな。それがわからんと面白味がない」「過去作を調べたらわかるよね」「B.Wの無駄遣い。あの一瞬の出演でいくら払ったんや」などと母子の会話も弾んだのであった。
 とはいえ、後味は悪いし怖いし気色悪いし、見て気持ちのいい映画ではないので、万人にお薦めとは言い難い。

SPLIT
117分、アメリカ、2017
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン、製作:M・ナイト・シャマランほか、音楽:ウェスト・ディラン・ソードソン

出演:ジェームズ・マカヴォイ、アニヤ・テイラー=ジョイ、ベティ・バックリー