吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ミッドウェイ

https://eiga.k-img.com/images/movie/92164/photo/72fc71600489454b/640.jpg?1594281085

 ローランド・エメリッヒ監督の作品だから、どうせ大がかりなCGとVFXが売りなだけでスカスカな話だろうと思って見ていた。やっぱりその通りだけれど、でも米日両方に目配りが利いた作品なので、そこは感心した。ミッドウェイ戦は真珠湾攻撃への復讐、という基本路線は従来と同じだけれど、日本人を"Jap"と呼ぶ兵士が一人も登場しないという不自然な設定にしてまで日本に気を使っているではないか、感涙ものだ。

 ひたすら戦闘シーンばかりでつないだ本作は、見終わったころにはすっかり疲れ果てて、二度と戦争はごめんだ、こんな戦闘に駆り出されるパイロットになんか絶対になりたくないと思わせるだけの恐怖と迫力がある。文字通り雨のように降ってくる銃弾をどうやってかいくぐれたのか奇跡としか思えないぐらいのすさまじさである。この映画を見て「それいくぞ、撃ちてしやまむ」と思う輩はよもやおるまい。立派な反戦映画ではないか。と同時に、この戦争の背景には一切言及されていないため、「わが軍は勇敢に戦ったぞ」と感動する靖国神社史観からは戦意高揚映画に見えるかもしれない。

 ところで、この映画はミッドウェイ海戦が情報戦であったことをしっかり描いているところが特筆すべき。日本軍の暗号がアメリカ軍に解読されていたというのは有名な事実だが、その過程が詳しく描かれるのは珍しいのではないか。ドイツ軍の暗号を解読したイギリス映画「エニグマ」が思い出される。intelligenceという単語が軍事用語であったことを改めて感じた。(レンタルDVD) 

2019
MIDWAY
アメリカ / 中国 / 香港 / カナダ Color 138分
監督:ローランド・エメリッヒ
製作:ハラルド・クローサーローランド・エメリッヒ
脚本:ウェス・トゥーク
撮影:ロビー・バウムガートナー
音楽:トーマス・ワンカー、ハラルド・クローサー
出演:エド・スクラインパトリック・ウィルソンウディ・ハレルソンルーク・エヴァンスアーロン・エッカート豊川悦司浅野忠信國村隼