ソウル大生の拷問死という事実を基に描かれた、見ごたえたっぷりの社会派ドラマ。「タクシー運転手」も良かったが、この「1987」のほうが作品の完成度がはるかに高い。ただし、登場人物が多すぎて一回見ただけでは理解できなかった(酔っぱらっていたせいもある(;^ω^))ので、2回鑑賞。実はもう一回見るほうがいいのではと思えるほど、多くの人々がそれぞれに重要な役割を演じてラストへと伏線が回収されていく、その展開がスピーディでかつ重厚だ。
わたしは1980年の光州事件は鮮明に覚えているのに、この1987年の反政府運動についてはほぼ記憶にない。これはどうしたことだろう? 1988年(いわゆる「パルパル」。はち・はちという意味の韓国語)のソウルオリンピックを前に総力を挙げてその準備に取り組んでいた全斗煥大統領にとって、この反政府運動は致命的であったろうと想像に難くない。
重いドラマではあるがラストの高揚感といい、途中にはさまるユーモアある脚本といい、見ごたえたっぷり。
警察の拷問によってソウル大生が殺され、その死に不審を抱いた検察官が警察を追い詰めていく。悪辣な警官が脱北者であることが切ない。北の体制から逃げてきた男は南の独裁者の手先になるのだ。反共法や国家保安法があった時代の韓国は暗黒の弾圧の歴史をたどっていた。そのことを思い出させる映画であり、その時代の最後の瞬間を感動とともに見せてくれる映画でもある(ここまで書いて念のために調べたら、国家保安法は廃止されていなかった!)。