吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

8年越しの花嫁 奇跡の実話

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 意外にもいい映画だった。期待を裏切らない、いやそれどころかそれ以上の出来。瀬々監督はこういう作品も撮れるんだなぁ、驚嘆と同時に改めて敬服した。土屋太鳳の演技力にも舌を巻いた。弾ける若さを見せていたかと思えば突然の病気、豹変する表情やしぐさ、別人のようになったヒロインの姿を懸命に演じていて涙をそそる。

 シャイな若者が明るい少女と出会い、婚約し、結婚式場も予約していよいよ式が迫った幸せのその時に、婚約者は300万人に一人という難病に罹って意識不明となる。回復の見込みのないまま、彼女が目覚めることを信じて待ち続ける若者だったが。。。。 という、実話。もちろん多少の脚色はあるんだろうけれど、あらすじはそのままだから、事実の経過も結末も観客は知っているわけだ。

 実際に自分の恋人が治るかどうかわからない病気で意識不明になって何年も寝た切り状態で、それで目が覚めるまで待てるっていう人、手を挙げて。だって目が覚めるかどうかもまったくわからないわけで、ひょっとしたらこのまま50年でも生き続けてそのまま死んじゃうかも、という世界ですよ。8年後に目覚めますってわかってたらその8年を待てるかもしれない。しかし、いつ目覚めるのかわからない人をよく待てたと思う。それがすごいし、結婚式場のスタッフも毎年毎年予約を延長しながら待っていたというのも感嘆するしかない。

 で、このケースの場合は8年も意識不明だったわけではない。実際にはもっと早く彼女は目覚めたのだけれど、そこからがまた難題山積だったのだ。むしろ、目覚めた後の時間のほうが大変だったかもしれない。ヒロイン麻衣は6年間意識不明だった。目覚めてからは、婚約者だった尚志のことをすべて忘れていた。家族でもない尚志が毎日自分のそばについていることが不思議でそして違和感があったのだ。これは絶望的な状況といえるだろう。必死のリハビリの日々が続く。そして、いつもそばにいる尚志の存在が重くなってくるのだ。これは誰にとってもつらい状況だったに違いない。

 すべての苦労を乗り越えて結婚式を迎える日。もう、この場面では涙腺決壊です。お涙頂戴映画だと思っていたけれど、決してそんなことはない、非常に厳しい日々が描かれている。と同時に、最後の結婚式のシーンがなぜこれほどに感動を呼ぶのか。もう言葉にできないから、ぜひ見てほしい。人と人を繋ぐものは愛と信頼。このシンプルな真実が納得できる作品。

 広々とした海辺の風景や、光あふれる二人の生活など、照明と撮影も素晴らしかった。(Amazonプライムビデオ)

(2017)
119分
日本

監督:瀬々敬久
 
原作:中原尚志・中原麻衣『8年越しの花嫁 キミの目が覚めたなら』(主婦の友社刊)
脚本:岡田惠和
撮影:斉藤幸一
音楽:村松崇継