吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ボヴァリー夫人とパン屋

 最初はどうということもない物語かと思って見ていたのだが、次第にそそられていき、最後にはそのフランス風のエスプリに痺れさせられた。

 まず、田舎の小さなパン屋の主人が元々は出版社勤務であり、父親が亡くなったので後を継いだという設定にそそられる。このパン屋マルタンは当然にも本好きであるが、風采の上がらない中年のオヤヂである。そのマルタンの自宅の隣にイギリス人夫婦が引っ越してきた。彼らの苗字がボヴァリーであり、妻のジェマが若く美しく豊満であるゆえに妄想を膨らませたマルタンは、ジェマを小説『ボヴァリー夫人』のヒロインと完全に同一視してしまう。

 たびたびマルタンのパン屋に買い物に来るジェマはたどたどしいフランス語でパンを注文する、その様子もまた色っぽくて可愛らしく、マルタンには格好の「仲良くなる糸口」となる。このあたりの描写が実にばかばかしくも面白くて、フランス映画はええなぁとわたしは笑ってしまったよ。マルタン自身がジェマと関係を持ちたいと思っていることは明白なのだが、なかなかそうはいかないところが観客にとってハラハラさせるツボでもある。

 で、そうこうするうちに現れましたよ、金髪の美青年が。すわ、情事発生か!と期待に胸を膨らませるマルタン。ほとんど病気のこのオヤヂ、ジェマが小説そのままに浮気に走る様子にハラハラしながらも目が離せない。ストーカーと化したマルタンは、いつもジェマの様子をうかがっている。当然自分の妻にもそれはばれてしまうのである。

 妻の浮気に気づいていないボヴァリーさんであるが、マルタンが「きっとこのままなら、ジェマは小説と同じ運命をたどるに違いない!」と心配の絶頂に達していたころ、新たな展開が!

 もう目が離せない、この話。フランスの田舎風景が美しくて、特に屋外の撮影にはたっぷりの陽光が入ってとても心地よい。マルタン目線で進むお話は観客の出歯亀根性をそそるし、ラストのオチの付け方もまた文学好きの心をくすぐる。お薦め作ですね! (Amazonプライムビデオ) 

2014
GEMMA BOVERY
99分
フランス

監督:アンヌ・フォンテーヌ
製作:フィリップ・カルカソンヌマチュー・タロ
原作:ポージー・シモンズ
脚本:パスカル・ボニゼールアンヌ・フォンテーヌ
音楽:ブリュノ・クーレ
出演:ファブリス・ルキーニジェマ・アータートンジェイソン・フレミングイザベル・カンドリエ、ニールス・シュネデール