吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

デイ・アフター・トゥモロー

 「インデペンデンス・デイ」でうんざりさせられたローランド・エメリッヒ監督、またしても地球の危機パニック映画を作りましたとさ。でも今回は、前みたいにアメリナショナリズムアメリカ万歳主義やアメリカ一国主義がかなり陰を潜めているので、とても好感を持って見ることができた。

 映画はまず、地球温暖化問題を議題に載せる国際会議の場面から始まる。古気象学の研究者ジャック・ホール(デニス・クエイド)が、かつて氷河期の引き金が地球温暖化にあったことを述べて警告を発するが、アメリカ副大統領は苦々しくその言を否定する。「いったいそんなこと、いつ起きるのか。100年先か1000年先に起こるかも知れないことより、今の経済危機の回避のほうが大事だ」と。 
 そういえば、アメリカは地球温暖化防止京都会議('97)で交わされた議定書にサインしていないのだった。ここでもやっぱり副大統領は言う。
「環境問題も大事だが、経済問題はもっと大事。環境規制のおかげで、経済的損失は○○億ドルに達する」と。
 ところがこの副大統領、ジャックの予言通りに地球規模の異常気象が起きてアメリカの北半分が壊滅状態に陥ったあと、最後には「わたしは間違っていた」とあっさり前言撤回する。これは潔いと言えば潔いのだが、そんなに簡単に納得してしまっていいのかな? ほんとうに地球温暖化二酸化炭素のせいなのか? 仮にそうだとしても、人間が少々二酸化炭素を放出しすぎようがどうしようが、太陽がほんのちょっと放熱量を弱くしたり強くするだけで人間なんて絶滅の危機に瀕するようなそんなちっぽけな存在なのだ。そのことを考えれば、人は生かされてあるのだということをもっと謙虚に考えてもいいのではなかろうか。

 さて、ストーリーは……、地球温暖化のせいで局地の氷が溶けて大量の冷水が海に流れ出し海流が変化する。世界中で異常気象が起こり、北半球の先進地域はほとんどすべて壊滅的被害を受ける。さらに、超弩級の寒帯ハリケーンのせいで北半球は氷点下100度の寒気団に襲われる。NYにいる息子を助けるためにジャック・ホールは仲間二人を伴って決死の救助に向かうのであった!
 っていうパニック映画の典型的展開をまんま踏襲し、筋書き通りに町が破壊され人々はパニックに陥り、右往左往する者と冷静に知恵を絞る者との差が運命を分け、筋書き通りにことが運んで筋書き通りに終わる。脚本にはなにか工夫した跡が感じられないけれど、NYの大洪水シーンや凍結シーンの迫力は満点で、細部の詰めの甘さや突っ込みどころは満載でも最後までハラハラドキドキして見ることができる。

 ジャック・ホールの息子たちが閉じこもった場所が図書館っていうのもピピ的には魅力だった。でも暖を取るために本を燃やすなんてなぁ! 図書館司書としましては、燃やして良い本とそうでない本をちゃんと峻別したいと思います。映画の中でもやっぱり図書館員は稀覯本を大事に抱えていたし。それが聖書なんだな。やっぱりこの手のパニック映画は聖書の黙示録世界観を反映した作りにならざるをえなくて、世界の終わりに人々は改心するのである。そのとき人類の知恵を伝え運ぶのは聖書なのだ。めでたしめでたし。

 公開初日の割にはちょっと寂しい入りだった。こういう大仕掛けのパニック映画ってそれこそ劇場で見ないと魅力半減(ほとんど絶減)なので、ぜひ劇場でご覧あれ。ちなみに、文部科学省推薦作品らしいです。

The day after tomorrow
制作年 : 2004
上映時間:124分
制作国:アメリカ合衆国
制作・監督・脚本: ローランド・エメリッヒ
脚本:ジェフリー・ナックマノフ
撮影: ウエリ・スタイガー
音楽: ハラルド・クローサー 
出演: デニス・クエイド
    ジェイク・ギレンホール
    イアン・ホルム
    エミー・ロッサム
    ジェイ・O・サンダース
    セーラ・ウォード
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