吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

20センチュリー・ウーマン

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 この映画については、iPadにダウンロードして通勤電車内で小刻みに観たりしたから、最初のうちは何の話なのかよくわからなかった。そのうえ、寝る前にベッドに持ち込む習慣がすっかりついてしまったわたしのiPad、これまた子守唄代わりに見ていたのでやっぱり何を言いたいのかさっぱりわからないという映画だったのだ。

 しかししかし、見終わったら不思議な感慨に満たされていた。こんな映画もあるんだね。原題は woman ではなく women なので、主役は少年の周囲にいる3人の女性たちだ。監督マイク・ミルズの自伝的映画だと知って今更ながらに彼の父をモデルにしたという「人生はビギナーズ」を未見であったことに気づいた。今回の「20センチュリー・ウーマン」が母をモデルにしたというから、彼は両親をモデルにして私小説ならぬ私映画を2本作ったわけだ。しかし、見事に私小説の域を越えて普遍性へと開かれている。

 その普遍性の源は世代論だ。社会運動の動乱が激しかった1970年から80年にかけて、日本でいえば「遅れてきた全共闘世代」あるいは「新人類世代」にあたる年代を上目遣いに見ているミルズ監督の少年時代を投影している主人公が瑞々しくかつ魅力的。単に家庭内の話に留まらせず、映画の中ではたびたび本物の記録映像が映し出される。ひょっとしたらその中には今回の映画のためにオリジナルで作られたフェイクドキュメンタリー画像も含まれているのかもしれないが、主人公一家だけではなく、当時の社会風潮がわかる映像や音楽を挿入することによって、社会へと広がる視線を獲得できた。

 そして主人公のジェイミーが愛らしく素直な少年で、よくぞ自分のモデルにこんな可愛い子役を抜擢したもんだと微笑ましく思う。15歳という難しい年齢の息子にお手上げのシングルマザーが、教育係として依頼した二人の若き女性たち。これがまた個性が強烈で、こんな二人に「教育」されたらそりゃまー、普通の男子にはならんわな。

 ジェイミーの母は40歳で彼を産み、一人で彼を育てた。彼女は設計技師としての収入があるからなのだろう、田舎とはいえ、大きな家に住んでいる。家が大きいからシェアハウスとして貸出し、そこにはフェミニストの写真家や元ヒッピーの中年男性が間借りしていた。

 母ドロシアはリベラルな人なのだろう。だから間借り人もそれぞれが個性豊かで自由奔放に生きている。とはいえ、あまりにもプログレッシブな彼らにドロシアもたじたじだ。ジェイミーのもとには夜な夜なやってくる幼馴染の2歳年上の美少女がいて、なぜか一緒のベッドに寝ているのにジェイミーとはセックスしない。

 とにかく常識外れの人ばかり登場しながら別に事件が起きるわけでもないところが不思議な話だ。ジェイミー少年にとってひと夏の目くるめく体験がちりばめられているのだが、それが母の死を先取りして語られていくので、ドロシアが20世紀に生まれ死んだ人であることがわかる。ジェイミーたちの家から旅立っていった人々はそれぞれにパートナーを見つけて幸せに暮らしているというラストシーンがほのぼのしている。(Amazonプライムビデオ)

2016

20TH CENTURY WOMEN

アメリカ 119分

監督
マイク・ミルズ
脚本:マイク・ミルズ
撮影:ショーン・ポーター
音楽:ロジャー・ニール
出演:アネット・ベニングエル・ファニンググレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ