吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

 決算!忠臣蔵

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 こんなにユニークで面白おかしい忠臣蔵は初めてだ。ネット上の評価は芳しくないが、わたしはとっても楽しめた。これは正統派忠臣蔵を知っている人でないと楽しめないので初心者にはハードルが高ったと思われる。登場人物がいったいどういうキャラクターなのか、四十七士の有名人が目白押しであるが知らない人がみたら全然わからないわけで。わたしがこれまで何本も見た忠臣蔵関係作品の中でも飛びぬけて面白い一作だった。

 仇討ちを経済事情から説明したのはNHK大河ドラマ峠の群像」だった。あのドラマは大好きだったのだ。してこの「決算忠臣蔵」も仇討ちがいくらかかったのかという決算から語るという手法は似ているが、なんといってもコメディなので真面目な仇討ち話にならない。これまでいろんな物語がその基盤となる物理的根拠(お金!)について言及しないのは常々わたしが不満に思ってきたことなので、こんなふうに具体的に金額を明示してくれる(しかも画面にいちいち数字が現れてキラキラ光る!)のが嬉しい。

 これでよくわかったのは、同じ藩士といえども筆頭家老の大石内蔵助と末端の事務方の藩士とは同い年にもかかわらず年収において6900万円と180万円の格差があったということ(金額の根拠はそば一杯18文を480円として換算)。

 身分制社会であったとはいえ、この格差の大きさはどうしたことか。しかし今だって格差社会なんだから、これくらいの差は存在するのに不可視なわけだ。いやいや、実際にはわかっているのにわからないふりをしているのかもしれない。

 面白おかしくおちゃらけてお金の話で忠臣蔵を語るというこの映画は、現在の格差社会に警鐘を鳴らしているのだ!! いや、そんな真面目な映画ではないのだけれど、深読みは可能。

 残念な点は、せっかく赤穂藩士たちが関西弁でしゃべっているのに播州弁ではないということ。どう聞いても吉本芸人の大阪弁に聞こえてしまうんだけど、わたしの耳が悪いのかしら? 大阪弁播州ではイントネーションは近いけど、語尾が違うからねぇ。

 2019
日本  125分
監督:中村義洋
原作:山本博文 『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書
脚本:中村義洋
音楽:高見優
出演:堤真一岡村隆史濱田岳横山裕荒川良々妻夫木聡大地康雄、西村まさ彦、木村祐一桂文珍笹野高史竹内結子西川きよし石原さとみ阿部サダヲ