吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

1917 命をかけた伝令

1914年夏に第一次世界大戦が始まったとき、クリスマスまでに終わると言われていたのに、実際には史上初の総力戦へと広がり、塹壕戦となった前線は膠着状態が続いていた。開戦から3年が経とうとしていた1917年4月、この映画の主人公である若きイギ…

ピータールー マンチェスターの悲劇

ガーデアン紙発祥のきっかけとなったセント・ピーター広場での大集会(1819年8月16日)へ向けた運動とそれへの弾圧の一部始終を描く。後に「ピータールーの虐殺」と呼ばれることになった、市民への官憲の非道の弾圧を再現するクライマックスシーンに圧倒され…

ANNA/アナ

もうなんにも考えたくない! 難しい話はいや! 面倒くさいことも嫌! 細かいことはどうでもいい! そういう人にはぴったりの愉快痛快スパイアクション。いや~~、面白かった! つじつまの合わないツッコミどころ満載のストーリーと、やりたい放題殺したい放…

県庁の星

数年ぶりに見直してみて、またまた感動した。 これは公務員バッシングや新自由主義、官民連携などの現在に続く問題の出発点を描いている優れた作品だ。 全体としてはコメディの要素が強いのだが、織田裕二が生真面目な公務員を演じてその強面(こわもて)の…

在りし日の歌

失政のツケは常に市井の人々に回る。大きな歴史の物語はひとつの家族の不幸として紡がれていく。 一人っ子政策への批判を込めた、30年に及ぶ家族の記録は中国現代史そのままをなぞる。とはいえ、そのまますんなりと時間の経過をたどるわけではなく、映画は現…

今宵、212号室で

いかにもアムール(愛)の国フランスらしいコメディ映画。 結婚して20年経った夫婦、今やもう恋愛対象ではなくなってしまった夫に内緒でちょっとした浮気ぐらい、ありえるでしょ! というお気楽なヒロインは司法史を教える大学教員マリア。このインテリ女性…

島にて

山形県酒田市に属する飛島は、日本海に浮かぶ離島である。人口は140人、平均年齢70歳。本作は島びとの暮らしを1年間撮影したドキュメンタリー。 この映画には主人公がいない。様々な島民の群像が淡々と描かれていく。 一人暮らしのお婆さんが夫や息子…

ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ

いかにも女性監督が作った作品である。歴史に埋もれた才能ある女性を描き、彼女の美徳を踏みにじったオヤジ的存在の不遜なル・コルビュジエを批判する。 確かに、女性でありながら1920年代一流のインテリアデザイナーとして認められていたアイリーン・グレイ…