この映画をみると主人公ニュートン・ナイトの伝記を読みたくなる。それほど、ニュートン・ナイトが魅力的な人物として描かれているからだ。南北戦争時代に南軍から脱走した兵士や黒人奴隷たちを集めて武装蜂起し、コミューンを打ち立てた人物がいたとは! まったく知らなかったので新鮮な感動があった。
南軍の衛生兵として戦場で地獄を見たニュートン・ナイトは、奴隷をたくさん所有する金持ちが兵役を免れることを知って激怒し、幼い自分の甥が戦死するのを目の当たりにして脱走を決意する。やがて彼は脱走兵たちと出会い、奴隷とともに南軍と戦うことを決意して武装放棄する。彼の放棄には貧しい白人農民、そして農婦たちも加わった。大勢の女性たちが果敢に銃を持って戦う姿には感動を覚える。しかもたいした銃器ももたないニュートン軍がなぜ勝てるのか? それは知恵をしぼったゲリラ戦を展開したからにほかならない。
ニュートン・ナイトは「ジョーンズ自由州」の立国を宣言する。彼が述べた自由州の原則は「貧富の格差を認めない。何人(なんぴと)も他者に命令してはならない。自分が作った物を他者に搾取されることがあってはならない。誰しも同じ人間である」という単純かつ崇高な理想だった。まさに社会主義社会の理想! 彼がどこでこの思想を手に入れたのかそれを知りたいと思ったが、映画ではそこまでは描かれていなかった。
途中でニュートン・ナイトの子孫が登場する場面がなんども挿入される。この場面があるから、彼が長生きしたことがわかるのだが、80年経っても彼が命懸けで闘った人種差別撤廃は実現できていなかった。異人種間の結婚が許されるのはさらに後の時代になる。そして黒人の公民権は南北戦争から100年経ってようやく実現したのだ。
アメリカ合衆国が多くの血を流して獲得した自由の理念がいままた脅かされようとしている。巻頭のすさまじい殺戮や絞首刑などの場面があるために本作はPG12に指定されているのだが、今こそこの映画を多くの人に見てほしい。(Amazonプライムビデオ))