吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ブラックパンサー

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 タイトルを見たときに、てっきりマルコムX関連の話だと勘違いしていたが、本作は黒人帝国の王族たちの活躍を描くSF大作である。

 アカデミー賞美術賞と衣装デザイン賞を獲ったのも当然の、非常に印象深いコスチュームと美しいセットが楽しめる。そのうえ、槍を使ったアクションも斬新で目を見張る。
 こういう作品は目新しいので瞠目するが、いずれは陳腐なものになるだろう。そういう意味で、旬の映画である。主人公はアメコミ史上最初の黒人ヒーロー、ブラックパンサー。彼はアフリカに存在するという設定のワカンダ国の王である。ここは、超高度な文明国であるにもかかわらず、能ある鷹は爪を隠して一切の高度技術を秘境に隠匿し、世界中からその実態を知られることのない文明国である。
 ブラックパンサーの本名はティ・チャラといい、かれは自国に眠る希少鉱石“ヴィブラニウム”の超絶パワーが世界を崩壊へと導きかねないことを先祖代々から教えられていて、その秘密を守る任務を負っている。しかしその秘密がアメリカCIAにかぎつけられてしまった! ここから始まる世界平和をかけた壮大な戦いの行方は!!
 というアドベンチャーアクション映画である。そもそもティ・チャラが国王に就任するにあたっては、周辺氏族の長からの挑戦を受けて彼らすべてを腕力で打ち負かす必要がある。そういう「原始的」な通過儀礼をクリアした者だけが国王に君臨できるのだ。その他いろいろと決められている掟の数々が「文化人類学的」に面白い。
 今回のヒーローがブラックアフリカンであると同時に、その彼を助ける女性たちがめっぽう強いところも、昨今の政治的配慮が行き届いている作品である。そして、ブラックパンサーが自国の秘密を死守することをわが使命とするのか、その秘石のパワーを全世界の平和のために使うのかを悩み葛藤するところなどは、一国社会主義か世界革命かというかつての社会主義革命路線の対立を地でいくような展開であり、大変に興味深い。
 アクション、美術、革命路線すべてにおいて見ごたえのあるニューヒーロー誕生の映画を堪能した。(Amazonプライムビデオ)