吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

アナと雪の女王

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 これはわたしの小学生のころのアニメ原体験を刺激する作品だ。そういう意味では個人的にはいたく感動した。氷が光り輝く美しさに魅せられ、4分間もあった予告編を二度三度と見てますますそそられていた。アニメの原点はやはりこの色の美しさと動きにある。色の線が流れるように画面いっぱいに展開し、青く輝くとき、えもいわれぬその深さに引き込まれていく。
 王国の幼い娘たち、エルサとアナという姉妹王女たちはいつも仲良く城の中で遊んでいた。なぜかエルサには魔力が備わっていて、それは年齢とともに強くなり、エルサは自分の力を制御できなくなって城の中に閉じこもる。彼女の触れるものが次々と凍ってゆくのだ。その力を自分自身が一番恐れていたエルサにとって、若くして両親が亡くなってしまったことも大きな衝撃だった。妹アナはエルサの魔法を知らない。アナはなぜエルサが扉を閉じて出てこないのかを知らずに、ずっと寂しい思いをしたまま成長していった。やがて年頃になった二人、ついにエルサが女王として戴冠式を迎える日がきた。何年ぶりかで城の窓という窓が開け放たれ、光が降り注ぐ。ついにアナとエルサは再会し、二人は喜びあう。戴冠式のパーティには南の国のハンス王子がやってきた。アナはハンスと意気投合、二人はたちまち恋に落ちて結婚を約束する。だが軽率な婚約に怒りを爆発させたエルサは夏の王国を雪と氷に閉ざしてしまい、自らの力に恐れおののいた彼女は遠く険しい山へと去ってしまった。そこで孤独の城を魔法の力で作りあげたエルサは、もう誰にも邪魔されない、恐れない、秘密がばれるとおののきながら暮らすことも無いのだ、と解放感を高らかに歌う。一方、女王に去られた王国は雪に閉ざされ亡国の危機を迎えていた。大好きな姉に会って王国の危機を救うため、アナは馬に飛び乗って冒険に出かける…。
 子どものころに読んだアンデルセン童話「雪の女王」を思い出す物語。かの物語を題材にしながらも本作はディズニーのオリジナル作だ。なんといっても圧巻はエルサがアカデミー主題歌賞”Let It Go”を熱唱しながら氷の城を魔法の力であっという間に建ててしまう場面。ここは何度観ても飽きない。アニメーションの力を最高に生かした場面だ。
 そして印象深いのは雪だるまのオラフ。彼は夏に憧れていて、夏の日差しを浴びたいという。だがそれは自分が溶けてなくなることなのだとは気づいていない。彼の望みをかなえるときは彼の命が亡くなるとき。その悲劇性にも目を奪われる。
 男女のラブストーリーを盛り込みながらもこの映画に描かれた愛はむしろ姉妹の愛だ。そして、心を閉ざして引きこもることの快感と、それと裏腹の孤独のつらさを複雑に描いた点でもディズニーアニメ史上、画期的。姉妹が掛け合う二重唱も聞き応えあり、歌唱力でぐいぐいと観客を引きつける。
 雪の場面の寒さは半端なく、観ているだけで震えが来る。氷の質感、光を跳ね返すその美しすぎる冷たさにゾクゾクした。歌、絵、ともに文句なく楽しめる。ただまあ、人物の顔がどうにも違和感があって、美男美女に見えないところがつらい。

 

 併映された短編「ミッキーのミニー救出大作戦」もアニメらしさを存分に発揮したアイデア作で、実に楽しかった。「カイロの紫のバラ」みたいにスクリーンから登場人物が飛び出てくるというお話なんだけれど、その飛び出し方があっと驚く。これは観てのお楽しみ。画面から人が出てくるというアイデアを最初に取り入れた映画は何なのか知りたいものだ。

FROZEN
102分、アメリカ、2013
監督: クリス・バック,  ジェニファー・リー ,製作: ピーター・デル・ヴェッチョ  ,製作総指揮: ジョン・ラセター  ,原案: アンデルセン雪の女王』 ,脚本: ジェニファー・リー  ,音楽: クリストフ・ベック 
声の出演: クリステン・ベル , イディナ・メンゼル , ジョナサン・グロフ, ジョシュ・ギャッド, サンティノ・フォンタナ, アラン・テュディック