吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

バジュランギおじさんと小さな迷子

  2月に見た映画。

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 主役のサルマーン・カーンは実年齢が50歳に近いから、若者の役をするのはかなり苦しいものがある。タイトルが「おじさん」だから、おじさん役なのかもしれないが、主人公のバジュランギは年齢不詳の若者おじさんである。
 して、物語は。パキスタンからやってきたムスリムの口のきけない女の子は、インドで母親とはぐれてしまう。偶然通りかかったバジュランギという親切な青年に拾われるが、発声できないために身元が不明である。なんとか親の元に返してやりたいと手を尽くすバジュランギは、少女のしぐさなどからどうやらムスリムらしいと気づいた周囲が「異教徒の娘なんか!」と眉を顰めても彼女を親の元に返すことを決意し、インドから国境を越えてパキスタンへとパスポートも持たない旅に出る。
 という、ロードムービーもの。ひょっとして実話かもと思ったが、フィクションであり、それだけに波乱万丈のストーリーに手に汗握る。インド映画だからもちろん歌って踊るシーンはふんだんに。バジュランギは新婚さんなので、美しい花嫁も登場する。という、歌あり踊りあり超絶可愛い子役あり華やかな衣装と美女と、観客サービスてんこ盛りの娯楽作。娯楽作といえども、立派な社会派作品であり、人情ものでもある。
 宗教対立が続くインドで、共生と互助の大切さを訴える異色作ともいえる。 音楽もよし。ベタな演出でもいい、そんなことは気にならない。「憎しみよりも愛を!」と訴えるラスト、パキスタンとインドの国境を挟んで群衆が押し掛けるシーンは涙なしには見られない。あんなに可愛い子役を出してくるなんて反則だ。ハンカチを用意して見ましょう。
 この映画がインドで大ヒットしたという事実に救われた気持ちがする。いつかきっと対立の歴史に終止符を打とう。インドの人々はそう確信したに違いない(たぶん)。
 
(2015)
BAJRANGI BHAIJAAN
159分
インド
監督:カビール・カーン
製作:サルマーン・カーン、ロックリン・ヴェンカテシュ
原案:V・ヴィジャエーンドラ・プラサード
脚本:カビール・カーン、パルヴェーズ・シーク、V・ヴィジャエーンドラ・プラサード
撮影:アセーム・ミシュラー
音楽:プリータム
出演:サルマーン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ、カリーナ・カプールナワーズッディーン・シッディーキー、シャーラト・サクセーナ