吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

人生スイッチ

 f:id:ginyu:20150922203612j:plain

 この映画は夜行バスを待つ間に見たのだが、眠気も吹っ飛ぶすごい短編集だった。これだけまあ、よくえぐい話ばかり集めたねー。1話ずつにはつながりはなく、すべて1話完結ものである。それぞれに話はよく考えてあって、コメディなんだけれど笑えない戦慄のお話しばかり。最後の「ウェディング」だけは予想を覆す結末で、なかなか良かった。

 それにしても、ラテン系の血の気の多さには驚くばかりだ。


第一話「おかえし」:モデルの美しい女性が仕事のために飛行機に乗る。乗り合わせた中年男性が彼女に気があるのか、話しかけてくる。意外や、お互いに同じ人物の知り合いであることがわかって、、、、

 トップバッターらしく、お話はちゃっちゃと進んで、えげつなく終わる。実はこれが一番面白かったのである。場内も爆笑の渦だった。合掌。

第2話「おもてなし」:夜のレストラン。店に入ってきた客の男が自分の家族を苦しめた高利貸しだと気づいた若いウェイトレスは、怒りに震える。話を聞いた中年女性のコックが「猫いらずを食べさせよう」と言い出して。。。。あまりのぶっとびおばさんに絶句。これまた劇場内は笑いが。合掌。

第3話「エンスト」:これ、タイトルを「パンク」にするほうが正しいと思うんだけど。山間部を走る2台の車。一台はピカピカの高級車で、一台はおんぼろ車。おんぼろ車の運転手に「田舎もん!」と罵詈雑言を浴びせて追い抜いた金持ちそうな運転手だったが、なんとパンクしてしまう。やがて追いついてきたさっきのおんぼろ車の運転手に壮絶な報復を受けることになり、、、。これまた驚くべき展開でスリルたっぷり! でも最後は爆笑。合掌。

第4話「ヒーローになるために」:気持ちはわかるよ、気持ちは。駐車禁止区域にうっかり車を止めたためにレッカー移動させられ、罰金も取られて怒り心頭のおじさん。これまた壮絶な報復をたくらんだ。冒頭が伏線になっているので結末は容易に想像がつく。

第5話「愚息」:交通事故を起こしてしまった金持ちの息子。ひき逃げの現場から自宅に戻って泣き崩れている間に、両親は弁護士と相談して使用人を代理の犯人にしたてることにする。しかし、報酬をめぐって言い争いになり。。。。これまたあっと驚く結末が待っている。結構笑える。人は欲をかいてはいけませんという教訓かな。合掌。

第6話「HAPPY WEDDING」:結婚披露宴の招待客の中に新郎の浮気相手の女がいて。まあ、ありがちな「結婚式で過去がばれて破談になる」というたぐいのお話。ちょっと長く引っ張りすぎの感じがするが、新婦がどこまではじけてむちゃくちゃするかと思いきや、意外と落ち着いてしまう。オムニバスの第1話があれだっただけに、こういう話で終わりにしたのか、とまあ製作者の意図はわからないでもないが。救いのない笑いのまま終わったほうがむしろすかっとしたかもしれない。結婚おめでとう。まあ、結婚生活なんてそういうもんですよ(笑)。 

RELATOS SALVAJES
122分 、アルゼンチン/スペイン、2014 
監督・脚本: ダミアン・ジフロン、製作: ペドロ・アルモドバルほか、音楽: グスターボ・サンタオラヤ
出演: リカルド・ダリン、オスカル・マルティネス、レオナルド・スバラーリャ、エリカ・リバス、リタ・コルテセ