吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

火口のふたり

https://eiga.k-img.com/images/review/3700/photo/ed3aa69b478e8294.jpg?1565665045

 タイトルバックの写真からしてまるでポルノ。そのあとも「まあ、なんていやらしい映画でしょう」と思わせる場面が続出するので誰が撮ってるんだと調べたら荒井晴彦。なるほど、と納得。当然にもR18+だった。

 登場人物はほぼ二人だけ。従兄妹どうしの二人は血縁があるからかどうかはわからないが、とにかく濃いセックスに浸りまくる。親戚というだけではなく幼いころからきょうだいのように育ってきた二人はほぼ近親相姦関係とも言える。この二人は若いころ秘密の恋人同士だった。やがて男が結婚し、離婚した。女は5日後に結婚式を挙げる。そして女からの誘いに男が乗って、女の結婚式までの5日間、二人はセックス三昧の日々を過ごすことにした。

 「わたしの身体、懐かしくない?」

 そんな誘いの言葉を吐けるのは女がまだ若いから。「けんちゃん」「なおこ」と呼び合ういとこ同士の親密な関係は二人の肉体を通して一層濃くなる。新婚家庭の新居になる家にほかの男を呼び入れてしまうなんて、なんという背徳! 新婚家庭の新しいベッドに他の男を引きずり込んで、「筆おろしが終わった」と嬉しそうに言う直子、なんという背徳!

 エマニエル夫人かい、と言いたくなるような場面とか、いろいろとセックスにまつわる話が延々と繰り返されていくが、この二人、この先どうするつもりだろうという先の見えない好奇心にかられて面白く見てしまう。食事の場面も美味しそうで、思わず「あの料理、作ってみようかな」と思わせるものがある。人は食欲と性欲の生き物なんだと痛感した。

 しかし結末があれだったとは驚くしかない。ラストシーンの富士山の絵が笑える。これはひょっとしたらものすごい傑作なのかも知れない。ちなみに2019年度キネマ旬報ベスト1。(Amazonプライムビデオ)

2019
115分
監督:荒井晴彦
製作:瀬井哲也ほか
原作:白石一文 『火口のふたり』(河出文庫刊)
脚本:荒井晴彦
撮影:川上皓市
音楽:下田逸郎
出演:柄本佑瀧内公美