銀行強盗を企んで、銀行へ通じる穴掘りを思いついた間抜けな泥棒レイ(ウディ・アレン)だったが、カムフラージュのために妻のフレンチーが開いたクッキー屋が大はやり。おかげで銀行強盗するより金持ちになってしまい……というドタバタコメディ。いかにもウディ・アレンらしい早口の饒舌な科白、ラブシーンも暴力シーンもない安心ファミリー映画。
確かに楽しい。おもしろい。だが、新味がなく、あまりにも毒がなさ過ぎるのが不満だ。そして、妻のフレンチーが生き生きと魅力的なのに対して、いかに役柄の上とはいえ、アレン演じるレイに精彩がなさすぎる。ウディ・アレンも歳をとったと感じてしまう。
憧れの金持ち生活を実現した成金夫婦が、次に何を欲しがるか。妻は上流階級らしい知識と教養を求めて猛勉強を開始する。一方、夫は相変わらず冴えない下品ぶりを発揮、妻との間には亀裂が。
このあたり、ウディ・アレン流の皮肉が散りばめられているのだけれど、わたしは笑いながらも顔が引きつってくる。だってね、生活にゆとりができた女が今更のように付け焼刃で教養を求めるって、別に悪いことでもないでしょーが。もちろん、フレンチーが教養を欲するのは虚栄のためなんだけど、それでも教養はないよりあったほうがいいとわたしなどは思ってしまう。
フレンチーが「家庭教師」に見込んだのが、デビッド(ヒュー・グラント)という画商。「大学へ行けば?」と勧めるデビッドに、「4年もかかるなんて。手っ取り早くあなたがわたしに教えて頂戴」という場面では思わず苦笑。わたしだって今更のように、もいちど大学へ通っているんだから。フレンチーとあんまり変わらないのかなと冷や汗が出てしまう。
でもこのフレンチーは付け焼刃とはいえ、それなりにハイソになっていくのだから、なかなか感心する。それひきかえ夫のレイはますますみじめったらしくなっていく。
この映画では、「おばか」な人間は皆笑い飛ばされている。賢くなろうとするおばか人間まで笑いの対象だ。結局、知性や教養なんて見栄やはったりで磨こうとしたって無駄だということか。
最後の着地は脱線がなくておもしろみに欠ける。とはいえ、オチは笑った。読み通りだったけど。それから、ヒュー・グラントってやっぱりスケコマシ役が似合う。
アレンらしい作品だが、ひねりとパンチが足りないのが不満。(レンタルビデオ)
Small Time Crooks
製作年:2000
上映時間: 95分
製作国:アメリカ合衆国
監督・脚本: ウディ・アレン
製作: ジーン・ドゥーマニアン
出演: ウディ・アレン
トレイシー・ウルマン
ヒュー・グラント
エレイン・メイ
トニー・ダロウ
ジョン・ロヴィッツ
マイケル・ラパポート
エレイン・ストリ