ノーベル賞受賞作なんだそうで、しかもこのタイトル。そそられてしまったわたしは単なる好色一代女か? ついうっかり読み始めたのはいいけれど、ドイツ語の駄洒落を日本語で読むという苦しさは想像を絶するものがある。単なる駄洒落だけじゃない、ほとんど全文が隠喩だけで構成されているという代物。これは難儀です。
しかも、相当いやらしくスケベなのである。「あ、こういうセックスっていやだわぁ~」と引いてしまうような描写ばかりが続く。わたしには合わない、これ。とにかく苦痛でたまらないけど、最後がどうなるのか気になってしょうがないから、とうとう3日かかって読んでしまった。でも途中かなりすっ飛ばしたから、ほんとはちゃんと筋すら把握できていない恐れがある。
作者はオーストリアで「赤いポルノ作家」と呼ばれているそうで、なにしろ延々と続く性描写には、資本家の強欲というものを肌で実感させるいやらしさがある。製紙工場の所長である中年の男は年がら年中いや、日がな一日中発情しているような絶倫男で、妻を相手にあの手この手で責めまくるのである。ところが夫に毎日無理強いされるセックスに嫌気がさしているはずの妻もまた、若い男とのセックスにのめりこんでいく。しかも彼らのセックスは尋常ではない。権力欲と己の欲望のままに相手に向かうその態度は、夫婦のセックスもしかり労働者の扱いもしかり。
あー、もういいかげん、ねちねち延々だらだらずるずると続くセックス描写とその描写から天衣無縫に逸脱する言葉のジェットコースターにはすっかり酔ってしまった。これ以上酔うと二日酔いになりそう。
というわけで、なんとか読了したけど、ええええ?? そんな結末ってあり??
<書誌情報>
したい気分
E.イェリネク著 中込啓子,リタ・ブリール訳 鳥影社・ロゴス企画部 2004.2