「都市主義」とはすなわち「脳化社会」のことをいう。現代社会の二項対立は左右のそれではなく、保守革新のそれでもなく、要するに脳と身体の対立なんだそうな。
全共闘運動も、左右の対立とか革命派と体制側の紛争ではなくて、都市と田舎の対立なんだそうだ。全共闘の学生たちは田舎。体制側は都市。で、田舎は身体で、都市は脳。
とまあ、こういう話から始まって、都市は人間の脳が生み出したものだから、身体のもつ自然な力をそぐものであるというような話が続く。各種のメディアに書いたエッセイの集成なので、同じ事を何度も繰り返したりという部分もあって途中ちょっとだれてくるけれど、おもしろく読めた。
本書は『バカの壁』よりかなりいい。この人はよくなんでも脳のせいにすると批判されるのだが(わたしもそう思っていた)、よくよく読めばちょっと違う。ただ、気になるのは都市対田舎、脳対身体という二元論をそんなに強調していいのかな、ということ。
養老さんの魅力は極論を言うところにあるんだろうな。だからつい筆が滑って失言もふえる。内田樹さんがどの本だったかで、「養老先生は世間をなめている」と絶賛していた。そのなめ方がなかなかいい。老人になってしまってリタイアしたらもう怖いものなし、って感じ。
タメになる部分は吸収し、話半分に聴いといたほうがよさそうなところはさっさと読み飛ばせば、養老さんの言っていることは森岡正博さんの「無痛文明論」に通底するものがかなりあって、興味深い。
ところで、本書は図書館で借りて読んだのだが、現在は絶版で、増補版が『あなたの脳はクセがある』という文庫で出版されている(画像)。今日、ジュンク堂で文庫版を立ち読みしてきた。内容はほとんど同じ。最後に一編、書き下ろしのエッセイが追加されているぐらいか。
<文庫版の書誌情報>
あなたの脳にはクセがある : 「都市主義」の限界
養老孟司著. -- 中央公論新社, 2004. -- (中公文庫)