巻頭からいきなりのアクションアクションでインディ・ジョーンズの健在ぶりを発揮! と思ったけれど、これは第2次世界大戦末期の若き日のインディの姿であった。時代はそれから四半世紀下って1969年。「現在」のインディは引退直前の70歳の老教授である。いかにも疲れた風情で最後の講義を行っている。学生たちは課題をやる気なく、インディは「今度の試験に出すぞ」と弱弱しい声で学生を脅している。
冒頭のシーンの若いハリソン・フォードは全部CGで描いたのかと思ったが、古い映像をつないでCGで修整し、声はアテレコしたそうだ。そんなうまくできるものなのか、驚くべし。確かに姿かたちは若いけれど、インディの声が老人くさいので違和感があった。
既存のシリーズを全部映画館で見ているわたしなのに(しかもDVD3巻セットを購入済み)、我が息子たちと一緒に繰り返し見て楽しんだこの物語のことも細部はすっかり忘れていたことに気づいた。次々と展開する場面を見ているうちに、「ああ、こういうシーンがあったな」「そうそう、インディは蛇が嫌いだった」などと思い出したが、主要なキャラクターのことをすっかり忘れているではないか! もういかんわ。
もともとありえない物語を楽しむ映画だが、ここはもう「ありえ~ん!」の100連発。最後のタイムスリップなんて、もはや理屈はどうでもいいんだろうなあと思わせる楽しさがあった。そして、これまでの作品ではヒロインが添え物的だったのが、今回はヒロインのヘレナが若くて強くてずる賢いというキャラクターだったのが現代風で面白く感じた。すでにインディとヘレナは親子ほど歳が離れているから、ロマンスも生まれようがない。
わたしとしては、トーマス・クレッチマンを久しぶりに見られたのがよかった。だいぶ年取ってしんどそうな感じがしたけれど、相変わらずナチスの軍人役が似合っている。マッツ・ミケルセンはデンマーク人なのにドイツ人のマッドサイエンティスト役が似合っているのは苦笑するしかない。
この映画はオールドファンのためのものだとつくづく思う。映画館の中は高齢者が目立ち、インディも老人となった。しかも胸の内に大きな悲しみを抱く老人に。
「過去の時代に戻れるならどこがいい?」というヘレナの質問に答えたインディの悲しい瞳が忘れられない。そして、ラストシーンの静かな感動は、ある程度の年齢がいった観客にはしみじみと伝わるものだろう。
まあしかし、何年たってもナチスは悪者で、つまりはアメリカの正義は揺らがないということなのだろう。
2023
INDIANA JONES AND THE DIAL OF DESTINY
アメリカ Color 154分
監督:ジェームズ・マンゴールド
製作:キャスリーン・ケネディほか
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス
脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、デヴィッド・コープ、ジェームズ・マンゴールド
撮影:フェドン・パパマイケル
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、トビー・ジョーンズ、ボイド・ホルブルック、マッツ・ミケルセン