この映画は編集が大変だったろうなあという感想がまずは湧く。で、アカデミー賞では編集賞受賞。やっぱり。この映画は小道具とか衣装デザインも力はいってるなあ。で、衣装デザイン賞ノミネート。主演のミシェル・ヨーってもう60歳なのによくこれだけアクションをこなすなあと感動。で、主演女優賞受賞。やっぱり。 ジェイミー・リー・カーティスの怪演に驚く。彼女だと最後まで気が付かなかったよ。で、アカデミー賞では助演女優賞。やっぱり。
しかし、作品賞とか監督賞とかあり?! アカデミー会員はこういう映画が好きなのか。それともめぼしいオリジナル作が少なかったからかもしれない。絶対「エルヴィス」のほうが良いから!
それにしてもなんで邦題がこれかな。「全世界同時進行」というタイトルはいかが? 「異次元だらけ!」でもいいか。「全部あ・た・し」とか。
世界は異次元だらけで、同じ名前の同じ人物が異なる人生を生きていて、それが「ジャンプ」することによって次元が異なる世界の自分が持っている能力を入手できるようになっている。という設定でできている映画。「ジャンプ」のためには、「思いっきり最悪にしょうもないことをする」必要があって、これが大笑いのネタ。最初こそあまり妙な行動でなくてもよかったのにだんだんエスカレートしてきて、最後はたまりません、この下品さ最大級!
異次元世界の支配者が全部の次元を支配・破壊しようとたくらんでいる、世界の崩壊を阻止せねばならない! それができるのは我がヒロインであるコインランドリーの店主おばさんだけなのだ。そのおばさんミシェル・ヨーはアメリカ社会に住む中国移民であり、税務署の追加徴税におびえている。言葉もうまく通じないし、専門用語は難しいし、娘は女の恋人をつれてくるし、いろんなことが一度に襲い掛かってきてヒロインはパニックに。そのうえ突然夫が豹変して「実は異次元から来た」とか言い出すし…。
で、無茶苦茶な話が下品に展開していくのだが、まあ疲れたわ、画面が超スピードで入れ替わっていくんだから、それこそ万華鏡。こんな映画なのに、最後のほうではうっかりウルっときてしまう観客もいるようで。わたしは「有機農法ケチャップ!」の場面で爆笑した。ほかにも最後の「尻穴挿入」も眉をひそめながら笑ったが、どう評価していいのか困る映画だった。
で、この映画のテーマは「親子は別物。自分の価値観と違う人生を我が子が生きてもそれは仕方がない、認め合おう。愛だよ、愛!」ということだろう。それって実はとても難しいことだったりする。それを言いたいためにここまで滅茶苦茶な映画を作ってしまうとは、ある意味天才かもしれない、ダニエルズ。
2022
EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONCE
アメリカ Color 139分
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
製作:ジョー・ルッソ
脚本:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
撮影:ラーキン・サイプル
編集:ポール・ロジャーズ
音楽:サン・ラックス
出演:ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン、ジェームズ・ホン、ジェイミー・リー・カーティス