吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

キャメラを止めるな!

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 え? まさか?! ほんとにまさかの驚き。こんな映画(失礼!)をフランスでですよ、しかもアカデミー賞を受賞しているような監督がですよ! リメイクするわけ? それだけで笑った。笑うだけでは飽き足らず、映画館まで見に行ってしまったではないか。わたしもアホやねぇ。

 で、前半の「ダメダメ映画」の部分はほんとうにダメで、本家本元の日本映画よりダメだった。これは、プロが本気でダメな映画を作ったらめっちゃダメな映画になるっていうこんがらがった状況が出来しているのだ。しかも、監督は「本当にダメな映画だったらフランスの観客が席を立ってしまわないか心配だから、そこはダメさ加減をうまく調整して…」みたいなことをインタビューで述べていた。いやあ、ほんま、日本と違ってフランス人は簡単に席を立ってしまうそうだからねえ(チケットが安いから金は惜しくない)。

 しかし日本のオリジナル作をそのままなぞったとはいえ、細部ではやはりフランス映画と思わせるものがある。なんといっても台詞が多い。そしてその台詞が妙に理屈っぽい。「腐った資本主義! グローバリズム反対!」みたいな台詞が普通に(いや、この場合は普通じゃないな、ゾンビが言うんだから)どんどん出てくるっていうのが笑える。

 わたしは日本版を見ているから種明かしを知っているだけに、新鮮な驚きはなかったのだけれど、日本側のプロデューサーがそのまんま竹原芳子が演じているのがもう、たまりません。彼女が画面に出てくるだけでほとんどお化け! 役者がみんな嬉々として演じているのが何よりも楽しかった。

 そうそう、こんな映画(失礼!)なのに劇伴が全力でついていて、アカデミー賞受賞作曲家のアレクサンドル・デスプラが素晴らしい音楽を聞かせてくれる。

2022
COUPEZ !
フランス  Color  112分
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
製作:ノエミ・ドゥヴィドほか
脚本:ミシェル・アザナヴィシウス
オリジナル脚本:上田慎一郎
撮影:ジョナタン・リッケブール
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ロマン・デュリスベレニス・ベジョ、竹原芳子、グレゴリー・ガドゥボワ、フィネガン・オールドフィールド、マチルダ・ルッツ、シモーヌ・アザナヴィシウス