吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

カミーユ

カミーユ (Camille)

 劇場未公開作。

 戦場カメラマンだった若きフランス人女性の生きざまを追う。

 巻頭、アフリカ中部の草原が写る。トラックの荷台に積まれた「荷物」を検問のフランス人兵士が見る。「5人の遺体を発見した。その中に白人の女性が」。そして物語は過去にさかのぼる。遺体として見つかった若き女性がいかに生き急いだかを記すために。

 2013年、カミーユは志に燃えて中央アフリカの紛争地域に足を踏み入れる。ジャーナリストとして紛争の実態をカメラに収め、フランスを始めとする先進国に訴えようとするのだが、彼女の青い正義感は空回りしていく。

 わずか半年余りしか、彼女の戦場カメラマンとしての仕事は成し遂げられなかった。いや、成し遂げられたのだろうか? 懸命に生き、必死に現場を撮影し、命を賭してアフリカの現状を母国に知らせようとした。しかし彼女の志はどこまで届いたのだろうか。雑誌に掲載された彼女の写真を見た兄は、「家族の誇りだ」と舞い上がったが、現状は変わらない、とカミーユは冷静に応える。

 次々と新しい話題を求めるマスコミにあっては、カミーユが追い求める中央アフリカの戦闘など「商品」にならないのだ。「アフリカはもういいから、ウクライナに取材に行かないか? 」と言われて憮然とするカミーユ。結局彼女はアフリカに「戻り」、命を落とした。2014年5月のことだった。短い戦場カメラマンの命を燃やして彼女が伝えようとしたことは何なのか? 考えさせられる映画だ。それはフランスの白人女性という立ち位置からアフリカを見つめる視線の危うさも含めて。(Amazonプライムビデオ) 

カミーユ
2019
CAMILLE
フランス 92分
監督:ボリス・ロシキーヌ
脚本:ボリス・ロシキーヌ
出演:ニナ・ミュリス、ブリュノ・トデスキーニ、グレゴワール・コラン