吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

麒麟の翼 ~劇場版・新参者~

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 あ、これはシリーズものだったのか。テレビで放送していたドラマの劇場版ね。なるほど、それでキャラクターの説明があまりなかったわけだ。

 労災問題が登場するのだが、気になるセリフが。「労災なら、治療費は会社から出るだろう」と登場人物の一人が言う。これ、間違いです。労災なら、治療費は保険から降りるのです。このへんの詰めが甘いな。労働問題を取り扱うならちゃんと調べてほしいわ。

 で、わりと本格的なミステリーなのだが、どうにもその本格的というあたりに実感がない。たとえばイギリスドラマ「シャーロック」に見るような見事な推理が展開されるわけでもなくて。主人公の刑事はなんでも「勘」で怪しいと思うみたいで、非科学的なのである。

 登場人物が多くて話の筋が変わるので若干わかりにくいが、当初、まったく謎の殺人事件と思われた事件が徐々に真相が明らかになるつれて、被害者の人間像が浮かび上がり、彼がとてもいいひとであったことが判明して切なくなる。明らかな悪人が存在しないにも関わらず、多くの人が不幸になるという展開がいたたまれない。まあ、それもこれも被害者たる父親の優柔不断や判断ミスが引き起こした悲劇であるのだが。

 被害者が倒れていた場所が東京日本橋麒麟像の下。ここが江戸の起点だから、というのがその理由だ。そういえば東海道はここから始まるのだよね。

 最後の場面、刑事が教師を説教するのが鬱陶しい。これが無ければよかったのにねぇ。(Amazonプライムビデオ)