吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

カエル少年失踪殺人事件

f:id:ginyu:20180409235759p:plain

 カエルを取りに行くと言って山に入ったまま行方不明になった5人の小学生たちの行方を捜すミステリー。1991年に起きた実際の事件を元に作られている。事件そのものは迷宮入りしたが、映画では犯人に迫るのはMBS放送の演出家だ。

 どこまでが事実でどこからが想像なのかがわからないのにもかかわらず、映画の中では犯人を断定したり、犯人像に迫って見せるという点といい、親を犯人扱いするくだりがあるという点でも、「デビルズ・ノット」(アトム・エゴヤン監督、2013年)を彷彿とさせる映画だ。いや、「デビルズ・ノット」のほうが後に製作されているから、本家はこっちだね。

 カエル少年事件では、心理学者が登場して犯人を名指し、家宅捜索するという行き過ぎた捜査が行われるが、ほとんど証拠がないないにもかかわらずいろいろ無理な捜査が行われていたことがわかる。功名心にはやった心理学者とテレビ記者が事件を利用するところがたまらない。しかし後年、テレビ記者はそのことを深く反省し、かえって事件の真相に執着するようになる。ついには真犯人に迫るのだが、証拠は一切ない。

 事実としては、この事件は未解決のまま時効を迎えた。映画に描かれていることがどこまで真実なのか観客にはわからない。韓国の未解決殺人事件を題材にした映画に「殺人の追憶」があるが、あの作品ほどの出来ではない。その理由は、社会情勢との連関をうまく描けなかったからだろう。いや実は子どもたちが失踪した日は選挙当日であったということから、選挙とのからみを疑う心理学者の弁もあるのだが、こじつけがましい。

 この映画が韓国でどのような評価を得ているのか、遺族たちはどのように映画を見ているのか、それを知りたい。(U-NEXT)

132分、韓国、2011

監督:イ・ギュマン、脚本:イ・ヒョンジン、イ・ギュマン、音楽:チェ・スンヒョン

出演:パク・ヨンウ、リュ・スンリョン、ソン・ドンイル、ソン・ジル、キム・ヨジン