吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ショコラ ~君がいて、僕がいる~

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 オマール・シーは際物、もしくは異色俳優として色物扱いされる恐れがあり、実際その瀬戸際の気がするが、本作でもそういう役をもらっている。

 今回オマール・シーが演じるのはフランス初の黒人コメディアン、ショコラの役。舞台は20世紀初めのサーカスのテントから始まる。彼とコンビを組んだ白人コメディアンフティットを演じているのはチャールズ・チャップリンの孫だ。二人ともたいへん芸達者で、特にフティットは素晴らしい。

 白人と黒人のコンビという前代未聞の芸はたちまち大人気となって、彼らはパリの劇場に出演するようになるが、ショコラが不法滞在のかどで逮捕されてしまう。そこから彼らの暗転が始まる。

 ショコラというのはもちろん本名ではない。黒人であり、被差別者であることを売りにした芸人の名前だ。白人が黒人の尻を蹴り上げ虐待する場面を面白おかしく見せるコントが大ヒットし、ショコラとフティットは大金を手にする。そしてショコラは女とギャンブルに溺れる。ショコラはコント芸人であることを自己否定して、演劇の世界に足を踏み入れるが、さんざんな結果に終わり、生活が荒れていく。このあたりの痛々しさは胸にしみて、見ているほうもつらくなる。

 結局差別から自由になることができなかったショコラの悲哀は、フティットとの別離と再会で最高潮になる。彼らの友情と敵愾心との複雑なからまりは、二人の役者の繊細な演技で見事に表わされていた。ジェームズ・ティエレの演技は必見。心に残る作品だ。(レンタルDVD)

CHOCOLAT

119分、フランス、2015

監督:ロシュディ・ゼム、脚本:シリル・ジェリー、ロシュディ・ゼム、オリヴィエ・ゴルス、音楽:ガブリエル・ヤレド

出演:オマール・シー、ジェームズ・ティエレ、クロチルド・エム、オリヴィエ・グルメ