吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

ハートストーン

 アイスランドは人口が33万人の小さな島国だ。その人口で一国を維持するのは大変だろう。主人公の少年たちは監督の自伝的要素を投影されているようだ。思春期の若者の行動は見ていて恥ずかしい。少年少女たちが2人ずつ組みになってちょっとした逸脱行動をしてみようと、親に内緒で「合宿」する場面など、なんだか懐かしくもこっぱずかしい。反抗期の子どもたちが親に反発し親のだらしなさにうんざりし、周囲の大人たちを冷ややかな視線で眺めているところは、実にリアルだ。
 アイスランドという国がどのような問題を抱えているのか、この国にはどのような疲弊が覆っているのか、それを知って見ていたらもっと深いところまで味わえたであろうが、大人たちの堕落した様子はそもそもこれが漁村の普通の姿なのか、いったいどうなのかわたしにはわからない。子どもたちには未来を夢見る希望があるのだろうか。
 巻頭の、魚を釣り上げてはしゃぐ少年たちの様子から、彼らが獲った魚を自宅へ持ち帰り、母親から邪見にされる場面まで、観客の目をぐっとつかみ取るきびきびしたカットが素晴らしい。
 ヤンチャぶりを発揮する黒髪のソールと、長身金髪の陰のあるクリスティアンという親友どうしの少年の対比が見事で、この個性が本作の最大の魅力だ。
 そしてもう一つの魅力はアイスランドの漁村の風景。小さな港、豊かな緑と低い山並み、沼や海岸といった水に溢れた環境の中、少年たちにはのびのびと駆け回る場所がある。国土は狭いけれど、少年たちには十分な広さの遊び場があるのだ。しかし、そののびのびと見える風景の中で、小さな村では人間関係が濃密に絡み合い、古い慣習から逸脱することが許されない無言の抑圧がある。
 たった33万人の全人口の中から選ばれた子役二人が抜群に素晴らしい。よく見つけたもんだ、この二人を。思春期の性の目覚めに戸惑い、気恥しさと気負いを持ち、そして他人とは違うセクシャリティに気づいて悩む親友を受け入れられない主人公ソールは監督の少年時代を映し出しているのだろう。
 途中少し緊張感が途切れてしまうのが欠点だが、「爽やかな青春映画」というのとは一味違う苦さが味わえる、心に残る作品。

HJARTASTEINN
129分、アイスランドデンマーク、2016
監督・脚本:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン、撮影:シュトゥルラ・ブラント・グロヴレン、音楽:クリスティアン・エイドネス・アナスン
出演:バルドゥル・エイナルソン、ブラーイル・ヒンリクソン、ディルヤゥ・ヴァルスドッティル、カトラ・ニャルスドッティル、ヨーニナ・ソールディス・カルスドッティル・ラケル