吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ディス/コネクト

 

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 ネット時代にふさわしいスリリングな物語。違法ポルノサイトに登場する青年と彼を取材するテレビレポーター、ネットを通じてイジメに遭う少年、チャットにはまって詐欺にひっかかる主婦、という3つのパターンの話が並行する群像劇。それぞれのパートは登場人物がほんの少しずつからまりあっている。ネット時代にありがちな典型的な社会問題をとりあげつつ、それらを陳腐にしない緊迫感のある演出が見ごたえあり。 

 群像劇それぞれの話にリアリティがあり、登場人物が絶妙に絡まりあっているところも脚本がよく練られていると感心する。チャットにハマる主婦は子どもを亡くした悲しみを夫と共有できないことに苦しみ、ポルノサイトで働く青年は家出している。ネットで女性になりすまして、孤独な同級生をからかういじめっ子自身が家では疎外されている。みなが大切な人たちとディスコネクトな状態にあるのだ。そしてつながろうとする相手はネットの向こうにいる見ず知らずの人間。身近な人とつながれず、バーチャルな人間関係に救いを求めようとする現代人の心理がよく描かれている。そしてその心理は容易に陥穽へと引きずられていく。結果は犯罪や自殺といった悲劇。だが人々はなんとかしてそこから脱出しようともがき、傷つけあう。

 悲劇へと落ちていく展開の説得力といい、愛を求めてもがく人々の切なさといい、役者たちの力演とあいまって素晴しいコラボレーションをみせ、ぐいぐいと引き込まれていく。ラストはかすかな光が暗闇を照らす。希望はあるのだろうか、かすかな希望は。繋ぎあった手と手がぬくもりを求める。手のアップが心に残る。その手を離さないで。その手を離さないで。 

 それにしても、ポーラ・パットンのことを最後までハル・ベリーだと思い込んでいたわたしって、もはや人面識別能力ゼロに近い、、、(レンタルDVD)

DISCONNECT
115分 、アメリカ、2012 
監督: ヘンリー=アレックス・ルビン 、製作: ミッキー・リデル ほか、脚本: アンドリュー・スターン、音楽: マックス・リヒター
出演: ジェイソン・ベイトマンホープ・デイヴィス、フランク・グリロ、ミカエル・ニクヴィスト