吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ジュラシック・ワールド

f:id:ginyu:20150830013452j:plain

 たいへんよろしい!

 うちの子どもたちはこのシリーズを映画館で観たのはもちろんのこと、DVDでも繰り返し繰り返し見たのである。もうセリフまで覚えてしまっているような作品だった。そして、そんなファンの嬉しい気持ちに応えるように、お約束の展開が。シリーズ第1作から既に20年以上が経ってしまっているということにも感嘆する。子どもたちの成長とこの物語の進展(のなさ)も軌を一にするところが感慨深い。

 前シリーズでは結局オープンに至らなかったジュラシック・パークは、ついに「ジュラシック・ワールド」と名前を変えて成功したテーマパークとなっていた。というところから始まる。巻頭の空撮が見事に観客の高揚感を促す。音楽といい、どうだ、これでもかっ! という力の入りように思わず前のめりになる。

 第1作のファンを大喜びさせるような設定、展開だらけで、恐竜はドンドン出てくるし、人を襲うし、その割りにはなんだか避難させるテンポがのろいし、悪いやつは食われまくるし、面白い怖い面白い怖い、の連続。なんといっても「こいつめ、殺されてしまえばいい」と観客に憎まれる人間はそのとーりになるのが実に爽快。でも中には「そんな死に方、ないよね、かわいそう」と同情をそそる人もいます(合掌)。

 前作までは恐怖の対象でしなかったベロキラプトルが今回、調教されてしまっているところが可愛い。しかし、人間に調教されきらないところがまた恐怖をそそる。自分になびくのかなびかないのか、その絶妙のあわいがわからない関係って、怖いよね。ラプトルとの「人間関係」もそういうもの。 

 第1作のときから同じ「自然の摂理への挑戦は神への冒涜であり、人間には赦されない」「功利主義・儲け主義への批判」というわかりやすいテーマは代わり映えしないが、それが安心映画の大事なポイント。

 見所はなんといっても最後の恐竜三つ巴合戦。強烈ですっ! 結局人間なんて無力な存在だと痛感させられる。

 「マッドマックス」が男女共同参画映画だったのに対して、「ジュラシック・ワールド」はミソジニー(女嫌い)丸出しなところが苦笑を禁じ得ない。

JURASSIC WORLD

125分、アメリカ、2015

監督: コリン・トレヴォロウ、製作総指揮: スティーヴン・スピルバーグ、脚本: リック・ジャッファほか、音楽: マイケル・ジアッキノ、テーマ曲: ジョン・ウィリアムズ

出演: クリス・プラットブライス・ダラス・ハワードヴィンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン、オマール・シー、B・D・ウォン、イルファン・カーン