吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

さよなら、さよならハリウッド

 ウッディ・アレンもすっかりお爺さんであります。そんな爺さんと美女のティア・レオーニじゃ似合わんやろう~と不審の目を向けつつ、相変らずしゃべくりまくるアレンにくすくすと笑いながら、最後まで結局退屈せずに楽しんでしまったのであります。

 さて物語は…。アカデミー賞を2回受賞した巨匠でありながら10年前からスランプに陥っている変人監督のヴァル(ウディ・アレン)の元に新作の話が転がり込んできた。ヴァルを推薦し仕事を持ってきたのは別れた妻でプロデューサーのエリー(ティア・レオーニ)だ。二人の離婚の原因になったエリーのかつての不倫相手今は婚約者の制作会社役員ハルとも一緒に仕事をせねばならない。仕事は欲しい、エリーには未練がある、ハルは憎いけど出資者だし……複雑な心境のヴァルはそれでも嬉々として新作の監督にとりかかろうとしたが、なんとクランクインの初日に心因性の失明状態に! 目が見えないことがばれればもうヴァルの監督生命はお終いだと慌てたエージェントはなんとかごまかして最後まで撮影を強行しようとするが…… 。

 こういう映画内幕ものは映画ファンが大好きなジャンルの一つだ。思い出すのはトリュフォーの傑作「アメリカの夜」だけれど、なかなかどうして本作も面白い。監督とプロデューサーの確執や撮影監督とのやり取りなど興味は尽きないし、ウディ・アレン自身の恨みつらみや自嘲、願望などが入り乱れているようでそそられる。かなりの部分が自分のことを描いているよな、と思いながら見た。

 そしてアレンの自虐ネタとユダヤネタの笑いが可笑しい。ユダヤネタに関してはそのすべてが理解できたわけではないような気がするが、そのひねくれ方やスピード感溢れる会話の妙は「おいしい生活」よりかなり面白い。

 ただし、映画作りのドタバタと並行してヴァルと息子との確執という問題も描かれるのが、どうも中途半端だったような気がする。このエピソードは要らなかったんじゃないか。 それと、目の見えない監督を笑うネタもかなり危なっかしくて、差別コードに引っかかるんじゃないかと余計な心配をしてしまう。

 とにもかくにも目が見えなくても監督して作品を完成させてしまおうというのだから、この話は滅茶苦茶なんだけど、こんな展開で強引にハッピーエンドにもっていくなんて、そんなことでいいのかぁ~と思いながらも笑ってしまった。しかしね、「次」はどうするつもり、ヴァルは(笑)

 老いたりといえども、ハリウッド映画界への強烈な皮肉とおちょくりがウディ・アレンらしくて笑える一作だった。(レンタルDVD)

HOLLYWOOD ENDING

制作年 : 2002
上映時間:113分
制作国:アメリカ合衆国
監督・脚本: ウディ・アレン
製作: レッティ・アロンソ
出演: ウディ・アレン
    ティア・レオーニ
    トリート・ウィリアムズ
    ジョージ・ハミルトン
    デブラ・メッシング
    ティファニーティーセン
    マーク・ライデル