人気テレビドラマの映画化らしいが、そもそもテレビ放送を見ないわたしとしては、そんなことは一切知らない(テレビは見ないのだが、ネットニュースでテレビ放送はある程度把握しているし、ドラマはAmazonなどで後追いで見る)。
この作品の基本のドラマ部分はあくまで大げさなコメディであり、そんないかにもテレビドラマ的なあほくさい部分はどうでもよろし。それよりも何よりも驚いたのは、この映画で描かれた架空の「天華村毒物ワイン事件」が、和歌山毒カレー事件をかなり忠実になぞっていることだ。しかもカレー事件が冤罪であることを示唆している点こそ瞠目すべきと言いたい。
そもそも、この映画の前提となる設定がよくわかっていないわたしなのだが、どうやら主役の松本潤演じる若い弁護士・深山(みやま)は刑事事件専門の弁護士らしい。これがテレビドラマで2016年から放送されたヒーローということか。わたしには、「なんだか目つきが気持ち悪いけど、妙にきれいな顔をした役者」という印象しか持てなかったのだが、彼が「嵐」の一員であることはWikipediaを読んで知った。わたしは「嵐」なるものを見たことがないので、どれだけ実力のあったグループなのかもさっぱりわからないのだが、彼らが登場するだけで視聴率がとれるということなのかな。
で、すごく若いと思っていた松本潤って、今年(2023年)40歳になるのだった! びっくりである。映画の中では完全に二十代にしか見えない! しかも大河ドラマに主演しているとな。もうテレビを見ないわたしには何もわからん。いやー、驚くべし。
いやいやそんなことはどうでもよくて、ここで言いたいことは、この映画で描かれた事件の元ネタになったと思われる和歌山毒カレー事件が冤罪としてたびたび再審請求されていること。そして、くだんのカレー事件の「真犯人」ではないかと疑われる噂の対象が、子どもたちであることだ。毒物鑑定のために SPring-8 という高価な装置を使ったという点も実際の事件調査とこの映画の展開は同じ。
カレー事件で使用されたヒ素の鑑定結果が捏造・過誤によることは既に新たな鑑定結果によって指摘されている。にもかかわらず、犯人として逮捕された林真須美死刑囚の判決は動かない。何度目かの再審請求が2021年に受理されているので、冤罪が晴れる可能性がある。そして、真犯人は実は子どもで、そのいたずらではというまことしやかな噂が流れていること。この映画はそういった一連の流れに沿った展開になっていることにわたしは大いに驚いた。
この映画については、主人公の深山弁護士が「真実を知りたい、それだけだ」と語るその言葉につよい感銘を受けた。映画のことよりもカレー事件の行方にこそ心が動いた作品だった。(Amazonプライムビデオ)
2021
日本 Color 119分
監督:木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾、辻本珠子
脚本:三浦駿斗
音楽:井筒昭雄
出演:松本潤、香川照之、杉咲花、片桐仁、マギー、馬場園梓、西島秀俊、蒔田彩珠、榮倉奈々、木村文乃、渋川清彦、石橋蓮司、奥田瑛二、笑福亭鶴瓶、岸部一徳