吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

オールド

https://eiga.k-img.com/images/movie/95209/photo/9bb7cac7218d4844/640.jpg?1623226090

 ナイト・シャマラン監督とは相性がいいのか悪いのか不明。当たり外れが大きいのだが、今回は割と当たりのほう。タイトルの「オールド」は「老化」という意味で使われている。

 1日に50歳も歳をとってしまうという不思議な海岸があって、そこに閉じ込められた数家族の数奇な運命の物語。いったいどこの海岸でロケしたのか本当に美しい浜だ。しかも周囲が切り立った崖で、ここから逃げることができない。この浜にバカンスのためにやってきた家族の愛らしい息子は、6歳だったのにあっという間に青年になってしまう。11歳の娘は成熟した大人になり、とにかく子どもたちの成長があまりに早いので、大人たちも「何か変だ、ここはおかしい」と気づく。

 しかしどうやっても逃げられない逃れられない。なんの因果でここに来ることになったのか? そもそもこのビーチの謎はなんなのか。このままこの浜に居たら、中年夫婦は一日で老人になって死んでしまう。なんとか脱出を試みるが、ことごとくうまくいかない。

 細胞の異様なスピード老化、時間が急速に早回りする、そんな恐怖が次々と襲ってくる。ある日突然、「あなたの寿命はあと24時間です。その間に急速に老化して自然死します」と言われて納得できるだろうか? しかし、これはとてつもない思考実験でもある。死を間近に見た夫婦は絆を取り戻すのだろうか? 子どもたちは親への愛情をどのように育むのだろう? 子ども時代も青春もあっという間にすっとばして中年になってしまう子どもたちの悲劇は、どう表現すればいいのだろう。

 最後にすっきり謎解きされるので、それはそれで驚きと共に納得できるから良しとしたい。でも「納得できる」と書いたけど、実は全然納得なんかできないから。所詮はSFじみたファンタジー。でも、わたしたちが日々直面する老化や認知症や死の恐怖をあっという間に十分味わわせてくれる。死にゆく人間という宿命の予行演習のような映画だった。最後に伏線回収。そう来たか。

 シャマラン監督がどこに登場するか当てるのも楽しみの一つ。あ、そこでしたか。全然違和感がない。(Amazonプライムビデオ)

2021
OLD
アメリカ  Color  108分
監督:M・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマランほか
原作:ピエール=オスカル・レヴィ、フレデリック・ペータース
脚本:M・ナイト・シャマラン
撮影:マイケル・ジオラキス
音楽:トレヴァー・ガレキス
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、アレックス・ウルフ、トーマシン・マッケンジールーファス・シーウェル、ケン・レオン、ニキ・アムカ=バード、アビー・リー、アーロン・ピエール