吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

ディアスキン 鹿革の殺人鬼

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 鹿革に異様な執着を抱く主人公の中年男が、大金をはたいて鹿革のジャケットを入手するところから映画は始まる。そして彼はそのお気に入りのジャケットを着こんで自家用車を一人運転して旅に出る。どこか知らない田舎町の小さなホテルで宿泊するのだが、鹿革に金を使ってしまったのでもはや現金もないし預金口座は別居中の妻に封鎖されてしまった。そんな切羽詰まった彼だが、口から出まかせで映画監督を装い、バーで知り合った女を巻き込んでビデオ撮影を続ける。何を撮影してるやらと思ったら、自分の姿だったりたわいもない風景だったり。しかしいつしか男の妄想は膨らみ、自分以外の人間がジャケットを着ていることが許せなくなる。次々とジャケット狩りを始める男の恐るべき暴走が始まる……

 音楽も禍々しく不気味で、そのうえ時々しか鳴らないのでいっそう効果的。だいたいが、主人公の頭がおかしいのはともかく、なんで女も同じように変なの。全部変な映画。まあ、監督がとにかく変わっているので、映画も変わっている。面白いかと訊かれたら、ノン!と答えるしかないが、自意識が肥大した現代人を描く映画は数多くても、こんなにけったいなのはそれほどない。そういう意味では珍奇さがあるので好きな人は好きだろう。製作費がほとんどかかっていないと思われるチープさも雰囲気づくりには向いている。こんな映画なのに有名な役者を使うってカンタン・デュピュー監督にはファンが多いのか? 劇場未公開作。(Amazonプライムビデオ)

2019
LE DAIM
フランス  Color  77分
監督:カンタン・デュピュー
脚本:カンタン・デュピュー
撮影:カンタン・デュピュー
音楽:ヤンコ・ニロヴィッチ
出演:ジャン・デュジャルダン、アデル・エネル、アルベール・デルピー