長男Yと一緒に。
シューティングは射撃であると同時に撮影そのものを指す。「ショット」という映画用語は元々射撃を意味するのだ。以上、Yの受け売り。
主人公は夢ばかり見て不眠になっている写真家のフィン。彼は成功した写真家であるにもかかわらず、自信がもてないのか、ミラ・ジョヴォヴィッチをモデルに使った撮影でも、ミラ本人から取り直しを申しだされる。パレルモで撮影したいというミラの言葉に従ってイタリアへやってきたフィンだったが、自分を弓矢でつけ狙う者の存在に気づく。
写真家を主人公としながら、その実、ヴェンダースが描いているのは映画そのもの。本作は映画について語るメタ映画の一つである。このテーマは映画監督が言及せずにはいられないものなのだろう。
画像がとても美しいので感動した。フィルム撮影でここまで綺麗なのは久しぶりに見たような気がする。
幻想的な映像の作りは美しく、映画的であるが、かといって何がいいたいのか伝わってこない。死神との会話によって主人公が解脱するとか悟りを開くとか生き直しを決意するとかそういうわかりやすい物語でもなく。結局のところただひたすらデジタル時代の「映画の死」について語っている作品といえよう。デジタル処理によって作品本来の味わいが失われていくことを嘆くかのような話の流れを映画の中で見せながら、実はヴェンダース自身がデジタル処理をふんだんに使っているという矛盾。映画人に限らず、多くの職人が、専門職が、研究者が、自分自身のこだわりや信条と矛盾することをせざるをえない現代社会システムをも自嘲するかのようだ。
膨大な書庫を擁する文書館を舞台に死神と対峙する場面が印象的なのだが、あれはロケなのか、セットなのか。ロケだとすればあの木造の古い文書庫はどこにあるのか、行ってみたい。パレルモに実在する?
パレルモの古い町並み、下町の裏通りの風情がなんともいえずいい感じで、Yともども「パレルモに行ってみたくなった」と意見が一致した。
パレルモ・シューティング(2008)
PALERMO SHOOTING
108分,ドイツ/フランス/イタリア
監督:ヴィム・ヴェンダース,製作:ジャン=ピエロ・リンゲル,ヴィム・ヴェンダース、製作総指揮:ジェレミー・トーマス、ペーター・シュヴァルツコフ、脚本:ヴィム・ヴェンダース、音楽:イルミン・シュミット
出演:カンピーノ フィン
ジョヴァンナ・メッツォジョルノ フラヴィア
デニス・ホッパー フランク
ミラ・ジョヴォヴィッチ
ルー・リード