吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

花束みたいな恋をした

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 恋の始まりから終わりまでの5年間を丁寧に、かつテンポよく描いていく青春物語。見ていて恥ずかしくなるような場面も多いが、なかなか小気味よかった。「500日のサマー」にも似ている。

 別れた二人が偶然再会してしまう冒頭、二人の出会いの時の5年前に時計は戻る。最後は再び現在に戻り、気まずい再会の後に黙ってまた別れていく。ただそれだけのことだ。ここには難病も戦争も出生の秘密もなにもない。ごく普通のカップルがごく普通に出会って意気投合し、ごく普通に暮らしていてなんでもないことにつまずいていく。あまりのあきりたりに呆れるほどなのだ。リアルと言えばリアルすぎるし、偶然にしては出来過ぎている設定。リアリティと作り物の絶妙の淡いが心地良いドラマだ。しかも主演二人に若さがあふれ、愛らしさに好感が持てるため、観客も感情移入しやすい。

 二人がお互いに好きな小説のことを語り始めるマシンガントークの場面がとても微笑ましく、読書好きな二人は最高にイカしている。こんな若者ばかりだと出版不況も起きないのにねぇ。(レンタルBlu-ray

2020
日本 Color 124分
監督:土井裕泰
脚本:坂元裕二
撮影:鎌苅洋一
音楽:大友良英
出演:有村架純菅田将暉、清原果耶、細田佳央太、オダギリジョー戸田恵子岩松了小林薫韓英恵押井守