これは意外な拾い物。
退位したドイツ皇帝ヴィルヘルム二世がその後どうなったのかまったく知らなかったので、それがわかるというだけでもとても興味深い。どこまでが史実なのかわからないが、よくできたスパイ恋愛ものと言える。
ただし、出演者全員が英語をしゃべるので、そこに違和感がある人には「もう無理」という感じかもしれない。
お話は1940年のオランダで展開する。退位した後、豊かな年金をドイツ政府からもらってオランダのカントリーハウスに住んでいる前皇帝夫婦は、いつか復位するという希望を捨てていないが、ヴィルヘルムも今は年老いて趣味の薪割に精出す日々だ。そんな時にナチス軍の将校たちが前皇帝警護のために屋敷にやってくる。オランダをドイツ軍が占領したというのだ。ヴィルヘルムたちの住む村にはイギリスのスパイ組織があるらしく、スパイ狩りのためにやってきた彼らは前皇帝の屋敷内に本拠を構える。その中の一人の青年将校が皇帝の美しいメイドに目を付けた。実はそのメイドのミーカこそがイギリスのスパイだったのだが、そうとは知らずに恋に落ちてしまう。
原題の”THE EXCEPTION”はミーカのセリフにある言葉だが、なぜミーカがナチスの将校を愛したのか、その理由はこれだ。将校は残虐な軍人ではなく、非戦闘員の殺害やユダヤ人狩りを潔しとしない心優しい男だった。「あなたは例外よ」とミーカは言う。あなた以外のドイツ人はみな残虐で非道で、、、というニュアンスがあるのだが、その恐怖が絶頂にくるのは、村にヒムラーがやってくるという情報が流れたときだ。
ここからがサスペンスフルな展開。果たして二人の恋はどうなるのか、ヒムラーを暗殺しようとするミーカはどうなるのか。
ヴィルヘルム二世に対してチャーチルがイギリスへの亡命を勧めるのはなぜだろうと思ってあとで調べたら、皇帝はヴィクトリア女王の孫だったのだ。ヨーロッパの王室はほとんどみんな親戚というのはその通りであったか。ヴィルヘルム二世はカイゼル髭として有名な立派な髭を蓄えた「リベラル派」であった。この前皇帝をクリストファー・プラマーがさすがの貫録で好演していて、大変存在感がある。
2016
THE EXCEPTION
イギリス / アメリカ Color 108分
監督:デヴィッド・ルヴォー
原作:アラン・ジャッド
脚本:サイモン・バーク
音楽:イラン・エシュケリ
出演:リリー・ジェームズ、ジェイ・コートニー、クリストファー・プラマー、ベン・ダニエルズ、エディ・マーサン、マーク・デクスター、ジャネット・マクティア