小説が原作というのがよくわかる映画だ。主人公がしゃべりまくる。それも独り言のように。それが幻想だったり妄想だったりするのをスルーっと楽しく場面を飛ばしてセリフでつなぐ演出が小気味よい。
コメディらしく妄想女の片思いをさらりさらりと笑い飛ばしながら軽やかに進む物語は、彼女が別の男に告白されて妙な三角関係になってますます快調。まるで中学生みたいな片思いを互いに押し付けあう男女のけったいな関係は、大人から見ればばかばかしい限りなのだが、これが憎めなくていい。
ヒロインは人づきあいが下手で大人しい目立たない会社員で、中校生の頃からずっと10年恋をしている相手のことを「イチ」と呼んで妄想の世界で彼と戯れる。しかし現実にはちっともイチとは近づけない。一方、そんなけったいな女なのに好きだと言ってくれる男がいて、その彼のことを「ニ」と呼ぶ。で、まあ、もう「ニ」でもえっか。という気持ちになったりするのだが。。。
いやもう面白いったらありゃしない。大人しい引っ込み思案の女のくせに他人になりすまして同窓会を企画してみたり、やることは大胆なこのヒロインの豹変する表情を松岡茉優が実にうまく演じている。この映画は彼女を見るための映画だ。
クライマックスの種明かしミュージカルは涙なしには観られない。ぐっと切なく熱いラストへとなだれ込み、決め台詞はもちろん「勝手にふるえてろ」。(Amazonプライムビデオ)
2017
日本 117分
監督:大九明子
原作:綿矢りさ
脚本:大九明子
音楽:高野正樹
出演:松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、北村匠海、趣里、前野朋哉、古舘寛治、片桐はいり