吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

記者たち 衝撃と畏怖の真実

 4月に見た映画。
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 NHKなどの報道機関が政府広報に成り下がってしまった今こそ見てほしい映画。
 ドラマはイラク戦争からの帰還兵が公聴会で証言する場面から始まる。青年は車椅子に乗ったまま、こう問いかける。「なぜ戦争を始めたのですか?」と。
 物語は2001年の9.11テロへと戻る。WTCビルが崩壊する衝撃の映像を久しぶりにまた見てしまった。やっぱり何度見ても衝撃の場面だ。
 本作の冒頭には「これは真実である」という文字が映し出される。「事実に基づく物語」とか「ほぼ事実」という文言が流れる映画は多いが、「全部事実」みたいなニュアンスは初めて見た。それだけに地味なお話である。巻頭しばらくして途中でちょっとわけがわからなくなって眠くなったりもしたが、要するに「イラク大量破壊兵器があるというのは大嘘」という報道を行なった小さな新聞社ナイト・リッダー社の4人のジャーナリストの物語なのだと理解したらあとは大変面白く話が進んでいった(というか、理解するのが遅すぎる自分を反省)。さすがにロブ・ライナー監督はうまい。これだけ真面目な社会派作品でもちゃんと見せ所はつかんでいて、観客を離さない。
 何度も当時の実写フィルムが挿入される。政治家はほぼ全員本人が当時の実写で登場する。ブッシュJr.大統領が盛大な嘘をついている画面を今見るともう白けてしまう。こんな映像を繰り返し流される本人も恥ずかしいだろう。
 ロブ・ライナー自身が演じた、ナイト・リッダー新聞社のワシントン支局長が素晴らしい。そのジャーナリストとしての勘といい、部下を信じてその能力を最大限に引き出すようにある時は叱咤し、ある時は無視し、しばしば大いに褒める、その管理者としての能力が卓越している。 
 実話が基になっているだけに派手なところはまったくないが、今年必見作の一つ。
(2017)
SHOCK AND AWE
製作:マシュー・ジョージ、ロブ・ライナーほか
脚本:ジョーイ・ハートストーン