3・26鑑賞。感動のあまり感想文も書けずにいたら、いつの間にかレンタルリリースされたので、早速ブルーレイを借りて2回見た。返すのが惜しくて3週間も手元に置いたままになってしまったが、本日とうとう返却に至る。いやー、もう素晴らしいの一言。3回見て、どんどん感動が高まるというのも名作の証拠ですな。
舞台は間違いなく現代なのに、レトロで懐かしい雰囲気に溢れたミュージカル。巻頭の渋滞シーンはゴダールの「ウイークエンド」を思い出させる。実はこの映画を見る前に予習しようと思った古いミュージカルを見る時間がなかったので、数多くの引用やオマージュがわからなかったのは残念。ラストシーンが「シェルブールの雨傘」だとは多くの人が指摘するが、わたしは似ているようなそうでないような、すっきりしない感じを抱いた。というより、シェルブールよりララランドのほうがずっと感動するのだ。
圧巻のオープニングは何度見ても震えが来る。よくぞこんな撮影ができたものだと驚くばかり。ハイウェイの群舞をワンカットで撮りきった6分間は映画史に残るだろう。全編にわたってチャゼル監督は長回しにこだわっていて、それが映画らしいミュージカルづくりに成功している要因だ。ストーリーにはなんら新奇性がないし、主役二人のダンスも素人っぽいのに、映画全体の躍動感やテンポの良さが非常に心地よい。もちろん楽曲は素直で歌いやすく、映画を見終わった後、思わず踊りだしたくなる(実際に一人で踊りまくりました)。
デートの約束に現れない相手を待って今か今かと映画館の前でイライラするセブ(ライアン・ゴズリング)の姿は、ふた昔前のデート風景のようだ。今なら携帯電話があるから、すぐに連絡がとれようなものを。この感じ、ドラマを盛り上げるのには格好ですな。携帯でいつでもどこでもつながるというのは緊張感がなくてよろしくない。
ミュージカルに多い、オーディションや映画の内幕ものという設定も映画ファンを喜ばせるし、映画内映画に「理由なき反抗」とか、なかなかのセンスの良さを感じる。天文台のシーンもまた、夜中に天文台が開いてるんかい!とか、来館者が勝手にプラネタリウムを動かすんかい!とかいろいろ突っ込みながらも、ファンタジーへと流れていく自然な展開に納得の場面なのだ。編集が実にスムーズ。
オープニングのハイウェイダンスと、ラストの回想シーンだけは繰り返し何度も見たくなる。この二か所だけでアカデミー賞は十分でしょう(作品賞は逃した)。The End のマークが出た瞬間に一人拍手を送っておりました。100点と言いたいけれど、エマ・ストーンがあまり好きではない分だけ減点。サントラ欲しい。いや、ブルーレイ・ディスクが欲しい!
LA LA LAND
128分、アメリカ、2016
監督・脚本:デイミアン・チャゼル、製作:フレッド・バーガーほか、製作総指揮:マイケル・ビューグ、撮影:リヌス・サンドグレン、音楽:ジャスティン・ハーウィッツ
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ