吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

8月の家族たち

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 舞台劇のテンションをそのまま映画にされるとチトしんどいものがある。暑苦しい映画。俳優のテンションも、8月のオクラホマも。

 熱い暑いある日、父の葬儀に集まった家族たちが繰り広げる「ホームドラマ」。家族の中にあるさまざまな秘密が一挙に噴出し収拾がつかないラストまで、ひたすらメリル・ストリープ演じる薬中毒の母親が世界の中心に居て毒を吐きまくる。

 一家は、インテリの父(登場してすぐに失踪)、癌治療中の母(さまざまな治療薬の影響でいつも朦朧としている)、夫と別居中の長女、教え子と浮気している長女の夫、生意気盛りの長女の娘、いい年をしていつまでも結婚しない次女、再婚予定の婚約者を連れてやって来た都会っ子の派手な三女(ジュリエット・ルイス、久しぶりに見た)、母の妹とその夫と息子。という総勢11人に加えて家政婦のジョナという若いネイティブ・アメリカンの娘がいて、このジョナが意外なところで大活躍。

 葬儀や結婚式のために集まった一家の中に秘密や欲望やねたみや憎しみが渦巻き、それらがあぶりだされていく、という展開の作品はそれほど珍しくなかろう。だから、おおよそどういう展開になるかは予想がつくのだが、それでも最後まで細かいところで予想を外されていくので、お話自体は飽きない。

 とはいえ、役者がみな達者で、子役のアビゲイル・ブレスリンに至るまで存在感のある演技を見せるため、息を抜ける場面がないのがしんどい。大画面で家族一同の罵り合いをさまざまなバージョンで次々とこれでもか、と見せ付けられるなんて、ちょっとやそっとの耐性ではこらえられません。脚本はいいのに、演出がきばりすぎ。唯一、屋外の場面で雄大なオクラホマの風景を見せてくれるけれど、あとは息が詰まる。ただまあ、登場人物が多くて、三人姉妹がまったく性格が異なり、それ以外もさまざまな人物が造形されているため、誰かに感情移入することはたやすいかもしれない。

 とてもハッピーエンドとはいえないラストシーン。そして人生は続く。

AUGUST: OSAGE COUNTY

121分、アメリカ、2013

監督: ジョン・ウェルズ、製作: ジョージ・クルーニーグラント・ヘスロヴほか、脚本: トレイシー・レッツ、音楽: グスターボ・サンタオラヤ

出演: メリル・ストリープジュリア・ロバーツユアン・マクレガークリス・クーパーアビゲイル・ブレスリンベネディクト・カンバーバッチジュリエット・ルイス 、マーゴ・マーティンデイル