吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

リミット

 アイデアがいい。実は斬新なアイデアではないのだが、登場人物たった一人の超低予算でこれだけ緊張感ある映画が作れる、というところがミソ。

 ある日、気がついたら棺桶の中に閉じ込められていて、土中に埋められていた、という男の話。棺の中には他人の携帯電話とライターが一丁あるのみ。さて誰に連絡してどうやって脱出するのか、そもそも彼をこんなところに埋めたのは誰なのか。
 という、シチュエーションドラマ。「キューブ」のようでもあり「フォーンブース」のようでもあり「ソウ」のようでもあり。なんと、スペイン映画だったとは。


 いきなり真っ暗な棺桶の中から映画は始まり、徐々に状況が判明してくる。男は民間軍需会社に雇われたトラック運転手で、イラクで米軍の物資輸送を手伝う仕事に就いている。何者かに襲われた彼、ポール・コンロイは棺桶に閉じ込められ、誰のものかわからない携帯電話だけを頼りになんとか脱出しようと試みる。棺桶の中の空気は徐々に薄くなり、携帯電話の電源は無くなっていく。ライターの油だっていつまで持つのか…。なかなか救助がやってこないので、ポールの焦りも頂点に達する。さて彼は見事ここから脱出できるのだろうか?


 という、手に汗握るかつ狭くて暗くてたまらんチープな映画。チープだけれど、真っ暗な棺おけの中でいろんなことが次々と起きて、一難去ってまた一難のサスペンスフルな展開。しかも軍需会社への強烈な批判に満ちた、社会派作品でもある。最初男の名前も境遇も何もわからない状態から徐々に彼の家族や会社のことなどがわかってくる。分かってくると、観客はついポールに感情移入してしまう。少しずつ主人公に気持ちを移し始めたころにクライマックスがやってくる。この尺の短さで実にうまく作ってある。

 先入観なしに見るのが一番いい。なので、これ以上は秘密です。(レンタルDVD)

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BURIED
94分、スペイン、2010
監督: ロドリゴ・コルテス、脚本: クリス・スパーリング、音楽: ヴィクトル・レイェス
出演: ライアン・レイノルズ