吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

最悪な子どもたち

https://eiga.k-img.com/images/movie/100427/photo/643b4c679e2ebf8e/640.jpg?1696557663

 フランス北部、イギリスに面する海岸地方にある「ピカソ地区」の労働者用集合住宅に住む子どもたちのオーディション場面から映画は始まる。

 これは映画のメイキング映像なのか? どこまでがドキュメンタリーでどこまでがフィクションなのか、見れば見るほどわからなくなる。ひょっとして全部フェイク? つまり「作り話」なのか、という疑いと混乱が湧きおこり、観客に不安を与える。

 この地方の住民たちは金髪碧眼の人が目を引くことからもわかるように、北欧バイキングの子孫が多そうだ。オーディションを通った少年少女たちは15歳から17歳ぐらいの4人で、彼らの家族も映画に登場して日常生活の一部が映し出される。しかし実はこれもフィクションなのだ。つまりこの映画はすべてがフィクションで、即席の役者となった素人の子どもたちが全部演じている。そこが驚異だ。設定があまりにリアルで、演出なのかどうかもわからないぐらいに人々の生活実態が伝わってくる。

 主要登場人物4人は全員が家庭や成育歴に問題をかかえている「最悪な子どもたち」。彼らのうち、すぐにキレるジェシーは撮影クルーにもくってかかり、挙句の果てには監督にもなぐりかかる。弟を病気で亡くしたリリは学校で「誰とでも寝るビッチ」と呼ばれている。ライアンは落ち着きなく常に身体を動かしている多動性の少年で、父親は蒸発、母親は心の病気になり、今は姉に育てられている。マイリスは心を閉ざした少女で、「役を降りたい。どうせわたしのはどうでもいい役なんだ」と言い出す。このような脚本は、オーディションを行った数千人の子どもたちの経験や暮らしをリサーチすることから生み出されたという。

 いったい何の映画を撮っているのだろうという謎がずっとつきまとい、ドキュメンタリーとフィクションの境界も溶けだしていくうちに、映画の中の人々の表情に観客は引き込まれていくだろう。彼らの生活と家族の問題が迫ってくるが、一方で子どもたちの役者としての成長にも目を見張る。

 演じる自己と演じられる自己が出会うとき、自らの才能を開花させたリリとライアンは泣き笑う。

映画の冒頭で感じた不安定さをいつしか忘れていることに気づき、彼らの笑顔に爽快感をつかむラスト。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞も納得の作品だ。

2022
LES PIRES
フランス  Color  100分
監督:リーズ・アコカ、ロマーヌ・ゲレ
製作:マリーヌ・アラリック、フレデリック・ジューヴ
脚本:リーズ・アコカ、ロマーヌ・ゲレ、エレオノール・ギュレー
撮影:エリック・デュモン
音楽:セバスティアン・パン
出演:ロマリー・ワネック リリ
ティメオ・マオー ライアン
ヨハン・ヘルデンベルグ ガブリエル
ロイック・ペッシュ ジェシー
メリーナ・ファンデルプランケ マイリス
エステル・アルシャンボー ジュディス
マティアス・ジャカン ヴィクトル
アンジェリク・ジェルネ メロディ
ドミニク・フロ レミ・カミュ

 

 

 

 

 

ゴジラ-1.0 

https://eiga.k-img.com/images/movie/98309/photo/91139476fd711568/640.jpg?1694660611

 戦後間もない時代に設定した、ゴジラ映画。わたしはこれまで何本ものゴジラ映画を見てきたが、これほど泣いたのは初めてだ。そしてなぜ「マイナス1.0」なのか、元祖ゴジラは1954年のアメリカのビキニ水爆実験をきっかけに生まれたことになっているのに、その前から登場しているからマイナスなのだ、しかもそれは戦争を引きずっているという意味がこのタイトルに込められている。

 物語は敗戦間近な離島大戸島に主人公敷島浩一が操縦する特攻機が着陸するところから始まる。彼は機体の不調を理由にこの大戸島に着陸したのだが、実は特攻逃れが本心だったのだ。その時、突然伝説の怪獣「ゴジラ」が上陸してくる。なんとかゴジラを追い払った敷島たちだったが、何人もの犠牲者が出た。

 彼がその後復員して東京の実家に戻ったところ、かろうじて焼け残った彼の家の周囲はほとんどが焼け野原だった。そこに赤ん坊を抱いた若い女・大石典子が転がりこんでくる。典子と赤ん坊に同情した敷島はしぶしぶ彼女たちと同居を始めるのだった。やがて敷島は高給に惹かれて東京湾の機雷を撤去するという危険な仕事に就くことになる。そんな折に巨大化したゴジラ駿河湾目指していることが発覚し…。

 さすがはVFXの達人・山崎貴である。ゴジラの造形が素晴らしい。迫力満点、怖さも強さもマックス。こんなゴジラ、どうやって倒すんですか、無理でしょと思わせる絶望感にひたれる。

 ゴジラのテーマ曲はもちろんのこと、元祖作品へのオマージュが至るところに表出しており、わたしは改めてオリジナル作を想起しながら見ていた。

 この映画は明らかに反戦映画であり、アジア・太平洋戦争への糾弾反省も込められているのだが、どこに向かって糾弾しているのかがよくわからない。それに、反戦なのになぜか戦争中の態勢をそのまま引きずってゴジラと対決する。相手が鬼畜米英からゴジラに代わっただけのようにも思える。戦前戦中の国家による情報操作や、人民を使い捨てのコマとしか見ていなかった大日本帝国軍の非情な本質など、至るところに体制批判のセリフが散りばめられていて、それは今の日本国にも通じるものだ。しかし、結局「民間の力でゴジラを殲滅しよう」と気勢を上げるシーンには首をかしげる。これも新自由主義の影響か?

 本作はご都合主義のセリフや展開が多く、どうせ架空の話なのだからそこはあまり気にならなかったのだが、くさいセリフをしゃべらされる役者陣のなかで安藤サクラが最もうまかった。さすがだね。

 ラストはハッピーエンドとは言えず、それはこの国がずっと原罪のように抱き続ける核兵器放射性物質)との対峙や悲劇が繰り返されるという暗示だった。

 というわけで、わたしとしてはたいへん面白く見ることができたゴジラ映画であった。あ、そういえば一瞬橋爪功がカメオ登場するんだけれど、何のために出てきたの? 橋爪さん、どうしてもゴジラ映画に出演したかった?(笑)。

2023
GODZILLA MINUS ONE
日本  Color  125分
監督:山崎貴
製作:市川南
脚本:山崎貴
撮影:柴崎幸三
音楽:佐藤直紀
出演:神木隆之介浜辺美波山田裕貴、田中美央、遠藤雄弥、吉岡秀隆青木崇高安藤サクラ佐々木蔵之介阿南健治

ドミノ

https://eiga.k-img.com/images/movie/99471/photo/5317fa4a3cd740fc/640.jpg?1692669254

 映画が始まる前に売店でパンフレットを買おうと思って、販売員の若いお姉さんに「パンフレット頂戴。アルゴ」と言ったら、「は?」という反応。あ、「アルゴ」ってベン・アフレックが監督としてアカデミー賞を獲った超面白い映画やんか、ちゃうちゃう、今回はベン・アフレックは監督じゃなくて主演や、えーっと、「ちょっと待ってね」とポケットから映画のチケットを出してタイトルを確かめた。「あ、ドミノ!」。お姉さんニッコリ。……年寄りはいややねぇ。

 さて映画は。これは騙しの映画だということを事前情報として仕入れてから見に行っているので、どの時点から騙されているのかとずっと半信半疑で見ていた。てっきり夢オチ系のそれかと思ったけど、微妙に違った。

 見事に映画らしい映画、映画という枠組みをとてもうまく作った映画だ。クリストファー・ノーランの「インセプション」や「メメント」みたいな、あるいはフランソワ・トリュフォーの「アメリカの夜」のような、はたまたウォシャウスキーきょうだいの「マトリックス」のような。

 この映画はぜひ事前情報なしで無心で見てほしい。原題は「催眠術」なので、そういう話だということは観客もわかっていて見ている。というか、天才的な催眠術師が登場するので、そのことはすぐにわかるのだが、その役にウィリアム・フィクトナーを配したのが本作の成功のもとだ。彼の独特の面構えが、いかにも怪しい催眠術師という雰囲気を醸し出している。そういう意味で本作はキャスティングがとてもよい。

 この映画の撮影場所には監督であるロバート・ロドリゲスのスタジオを使ったという。なんという贅沢だろう、世界中の監督が嫉妬するようなことではないか! 自分のスタジオを持っている監督なんてそうそういないからね。日本では宮崎駿ぐらいか。

 で、ストーリーの骨子は。主人公であるダニー・ローク刑事は、5年前にふと目を離した隙に5歳の愛娘ミニーを誘拐されてしまった。それ以来、娘の行方はようとして知れず、本人はすっかり心を病んでしまってカウンセリングに通う日々。そんな場面から映画は始まる。そこから、なぜ娘が行方不明になったのかを探るうちに、さらに多くの謎を背負うローク刑事の疑惑と活躍を描く。

 この映画にはいろいろと仕掛けがあって、ローク自身が催眠術にかかっている状態で目の前に起きていることを見ているので、観客にもその不自然さが伝わる。これはいったいどうなっているんだろう? 見ている観客のほうもだんだん様子がわからなくなり、混迷を深めていくころ、真相が明かされる。これは驚くべき映像効果だ。実に素晴らしいので拍手喝采したいところ。

 しかしここで騙されてはいけない。この映画はどこまでも観客をだますので、エンドクレジットの後までちゃんと見ておかないといけない。エンドクレジットが始まったからといって席を立ったり、DVDや配信を切ったりするのは絶対にやめるべし!

 というわけで、どこまで行ったら終わるんですか、この話は(苦笑)。

2023
HYPNOTIC
アメリカ  Color  94分
監督:ロバート・ロドリゲス
製作:レイサー・マックス、ロバート・ロドリゲスほか
脚本:ロバート・ロドリゲス、マックス・ボレンスタイン
撮影:パブロ・ベロン、ロバート・ロドリゲス
音楽:レベル・ロドリゲス
出演:ベン・アフレックアリシー・ブラガ、J・D・パルド、ハラ・フィンリー、ウィリアム・フィクトナー

ほかげ

https://eiga.k-img.com/images/movie/99802/photo/29dc07c356a0a541/640.jpg?1690337636

 塚本晋也監督には「野火」という恐ろしい作品がある。あれは忘れられない恐怖体験であり、二度と見たくないけれど一度は必見と言える作品だった。「野火」は大岡昇平が緻密に描いた、恐るべき戦場の飢餓小説を映画化したものだ。目を覆うような惨状が繰り広げられていた。

 一方、敗戦直後の庶民の生活を描く「ほかげ」には、一転して戦後の退廃的な雰囲気が濃厚に漂う。戦争が終わって人々は解放されたはずなのに、その喜びも希望も感じられないような画面が続いていく。

 舞台は東京の下町と思しき小さな居酒屋、そこは周囲が大空襲で焼け野原になったにもかかわらず奇跡のように焼け残った家だった。焼け残ったというよりは半焼けのまま生きながらえた妖怪のようなおどろおどろしい文様が襖(ふすま)を飾る、店舗兼住宅である。

 その、狭苦しくて息が詰まるような家の中で物語は展開する。居酒屋といいながらカウンターは殺風景で食器はほとんどない。食べ物もほとんどない。こんな店では生計は成り立たないだろう。店主である一人暮らしの若い女は売春によって生活を維持していた。

 そんなある日、7歳ぐらいの少年が店にやってくる。戦争孤児である彼は闇市で食べ物を盗んで生きていた。そしてもう一人、若い復員兵が女の体を買いにやってきたが、彼は少年と共にそのまま居酒屋にいついてしまう。疑似家族のように三人は毎晩、川の字になって眠った。暑い暑い昼間、夜も暑くて寝苦しい。汗だくになっている彼らのすえた体臭が漂ってきそうな暑苦しさと不潔さに、さらに戦争が終わってもなお満たされない飢餓や喪失の悲しみが重なっていく。

 やがて徐々に彼らの過去がうっすらと観客にも伝わってくる。場面は室内のまま、登場人物もほとんど三人のまま、閉塞感に苦しめられる密室劇に、ある日突然外の世界が加わる。この転回により、観客は張りつめていた息苦しさから解放されたかに思うのだが、そうは問屋が卸さない。少年は正体不明の男と共に旅に出る。それは戦争に決着をつける旅だった……。

 戦争は終わったのに、苦しみは終わらない。人間は壊れ、悪夢にうなされる。この映画は敗戦直後の庶民の暮らしと心情を、鬼気迫る映像で切り取った。女にも男にも子どもにも名前はない。役者たちは名もない人々を渾身で演じている。とりわけ、子役の塚尾桜雅の理知的な瞳はまっすぐに大人たちを射抜く力強さを持つ。ヒロインを演じた趣里の存在感も際立っている。

 「野火」の凄惨な戦地だけではなく、戦後まで地獄は続いていた。塚本監督は、新たな戦前とも思える今の世界にこの作品を放った。それは火影(ほかげ)に揺れる人々の姿に未来へのかすかな希望を託す物語だ。託された未来を、わたしたちはつかめるのだろうか。

 ところで、主演の趣里NHK朝ドラ「ブギウギ」とはまったく違う人物のように見える素晴らしい演技だと評判になっているが、私はテレビ放送を見る習慣がないため、朝ドラもまったく見ていないので比べることができないのは残念だ。

  2023
日本  Color
監督:塚本晋也
製作:塚本晋也
脚本:塚本晋也
撮影:塚本晋也
編集:塚本晋也
出演:趣里森山未來、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛、大森立嗣

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

https://eiga.k-img.com/images/movie/79776/gallery/main_large.jpg?1407127289

  第1作はつまんなくて、第2作はまあまあ面白くて、そうなると第3作はどうなのだろうか、と期待にワクワク。なんてするわけなくて、あっという間に退屈して爆睡。ほぼ全編寝ていたので、なんの話かさっぱりわからなかった。これはいかん! というわけでiPadで1.5倍速で再見。なるほど、わりと面白いではないか。若いメンバーも増えているし。でも頭を使わない程度は第1作に戻ってしまったような感じ。

 今度のお話は、超悪人の武器商人を生きたまま逮捕すること。今まではブルース・ウィリス演じるチャーチという偽名のCIA役人から仕事をもらっていたのだが、そのチャーチが登場せず、代わりにもっと年寄りのハリソン・フォードが出てくるのにはのけぞった。CIAには定年制がないのかい。

 で、どっちにしてもCIAは汚い奴らだということになっている。汚れ仕事は傭兵エクスペンダブルズに下請けさせて、手柄は自分たちの横取り。失敗したら傭兵のせい。

 今度の敵は最強なのだ、なにしろエクスペンダブルズ創設者のひとりだったのだから。これがメル・ギブソンなんですよね、強いはずだ。シュワちゃんカメオ出演なんていうけち臭いことは言わずにガンガン重量級の銃をぶっ放している。わたしは武器にうといので銃の種類はさっぱりわからないが、シュワちゃんぐらいの体格があるとでっかい銃(昔のガトリング銃みたいな見た目)でも平気で振り回せそうに見えるから恐ろしい。

 で、敵を生け捕りしないといけないから面倒くさいですよ、これが。殺したらあかんって命令されているからね。でも大事な仲間を殺されたりしたらこれはもう仇討ちモード全開。今回は頭を使わない分は驚異のバイクスタントで観客の度肝を抜きます。ここまで突き抜けちゃうと、もう続編は無理と思わせるものがある。 

 ところで、ジェット・リーがこのシリーズでずっと「身長が低い」と揶揄されているのだけれど、そういう身体的な特徴を笑うってアリ? (Netflix)

2014
THE EXPENDABLES 3
アメリカ  Color  126分
監督:パトリック・ヒューズ
製作:アヴィ・ラーナーほか
製作総指揮:トレヴァー・ショートほか
原案:シルヴェスター・スタローン
脚本:シルヴェスター・スタローン、クレイトン・ローゼンバーガー、カトリン・ベネディクト
撮影:ピーター・メンジース・Jr
音楽:ブライアン・タイラー
出演:シルヴェスター・スタローンジェイソン・ステイサムアントニオ・バンデラスジェット・リーウェズリー・スナイプスドルフ・ラングレン、ケルシー・グラマー、テリー・クルーズランディ・クートゥアロンダ・ラウジー、グレン・パウエル、メル・ギブソンハリソン・フォードアーノルド・シュワルツェネッガー

エクスペンダブルズ2

https://eiga.k-img.com/images/movie/57824/gallery/still-11_main2_large.jpg?1396890410

 傭兵軍団「エクスペンダブルズ」の次なる舞台はネパールである。いきなりネパールで銃撃戦、爆撃戦、炸裂の上にも炸裂。なんでそんなところに戦車の車列が現れるんだ? いやいや、考えたらあかん、考えたらあかん。なんでそんなところで急に別の傭兵があらわれるんだ、タイミングよく? いやいや考えたらあかん、考えたらあかん。なんでそんなところに…あかんあかん、考えたらあかん。

 というわけで、頭を使ってはいけない展開は相変わらず。しかし、第1作はほんまに何のひねりもなくそもそもストーリーもなかったような気がするのだが、今作はけっこうおもしろかった。ちゃんとひねりもあり、伏線があり、それなりに少しは頭を使った形跡が見て取れる。

 シュワちゃんもまたまた登場するし、ブルース・ウィリスも悪役CIA役で出てくるし、なかなか楽しい。しかし今やブルース・ウィリス認知症で表舞台には出てこられない状態というのが悲しい。

 して、今回はアルバニアに墜落した飛行機に積んであった金庫から「あるもの」を拾い出すのがエクスペンダブルズの役目。若く美しく頭のいい中国人女性が一人仲間に加わった。そして、イギリス人の若者も。おじさんばかりのエクスペンダブルズに女性と若者が加わるなんて、労働組合の青年婦人部かい! 

 この若者、てっきりクリス・ヘムズワースかと思っていたのだが、その弟のリアムだそうで。なかなか可愛い。

 この手の戦闘アクション、「うわ、火薬使い過ぎ!」と思わず叫びそうになる。こういうのは映画の中だけにしてほしい。現実にウクライナやガザで多くの人々が亡くなっている現在、映画よりも現実のほうがはるかに恐ろしい。戦闘アクションは暴力的な感情や行動を促進する悪い作品だろうか? そうかもしれないが、むしろ代理行為としての意味もあるのではないか。本物の殺人や戦闘の代わりに荒唐無稽なアクション映画を見て笑ってすかっとする。

 で、またまた続編ができているので、次は「3」である。あー、忙し。(Netflix)

2012
THE EXPENDABLES 2
アメリカ  Color  102分
監督:サイモン・ウェスト
製作:アヴィ・ラーナー
ケヴィン・キング=テンプルト
ダニー・ラーナー
レス・ウェルドン
脚本:リチャード・ウェンク、シルヴェスター・スタローン
撮影:シェリー・ジョンソン
音楽:ブライアン・タイラー
出演:シルヴェスター・スタローンジェイソン・ステイサムジェット・リードルフ・ラングレンチャック・ノリステリー・クルーズランディ・クートゥアリアム・ヘムズワースジャン=クロード・ヴァン・ダムスコット・アドキンス
ユー・ナン、ブルース・ウィリスアーノルド・シュワルツェネッガー

リチャード・ジュエル

https://eiga.k-img.com/images/movie/92146/photo/ae11192466b2665c/640.jpg?1576561387

 奇をてらうこともなくかっちりと作られている映画なので、その分面白みがない。しかし、冤罪というものがこのようにして作られるというのがよくわかって、恐ろしい。

 物語は、1996年のアトランタ五輪大会期間中に起きた爆弾テロに題材をとる。主人公は警備員だったリチャード・ジュエル、33歳。五輪大会の近くで開かれていたロックコンサート会場には大勢の若者たちが押し寄せていた。その場に置かれた不審物を発見したリチャードは中身が爆発物であることに気づいて警察に通報する。大勢の人々を避難させたおかげで被害は小さく抑えられたが、それでも2名の人が亡くなった。当初リチャードは英雄としてほめそやされたが、ほどなくしてFBIが第一発見者のリチャードを疑うようになる。たちまちマスコミにリークされ、彼は疑惑の人としてセンセーショナルに扱われるようになる……

 物語は事実を元にしているうえに比較的新しい事件について描いており、リチャード本人は死亡しているが遺族が生きてるという事情もあるのだろう、ほとんど盛る部分もなく淡々と進む。

 ところでわたしはアトランタでオリンピックが開かれていたことすら覚えていない。もうすでにこのころからオリンピックにはほぼ興味をなくしていたので、テレビも見ないし、何も知らない。最後に見たオリンピックは1988年ごろのではなかろうか。いやまあ、わたしにとっては東京オリンピック(もちろん64年の)が素晴らしかった。ベラ・チャフラフスカに憧れて、体操選手になりたいと思ったものだ。

 閑話休題。マスコミの過熱報道や根拠のないバッシングには和歌山毒カレー事件を想起させる。あの一連のマスコミ報道のせいで、わたしもすっかり林真須美さんを犯人と思い込んだし。今では冤罪の疑い濃厚と言われていて、再審請求が受理されている。(Amazonプライムビデオ)

 2019
RICHARD JEWELL
アメリカ  Color  131分
監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッドほか
原作:マリー・ブレナー
脚本:ビリー・レイ
撮影:イヴ・ベランジェ
音楽:アルトゥロ・サンドヴァル
出演:ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェルキャシー・ベイツ
ジョン・ハムオリヴィア・ワイルド