吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー

  那覇市長に当選しながら1年で米軍から追放された瀬長亀次郎の波乱の生涯を描くドキュメンタリー。「不屈」が座右の銘だった彼らしい生涯が感動的に描かれていく。稀代の名演説家だったというその若かりし頃の演説を聞いてみたいものだ。後半に彼の国会演説の場面が映っていた。確かに演説はうまいが、天才的なアジテーターとしての手腕はやはり大衆を前にしてのものにこそ本領を発揮したのではないか。
 瀬長の闘争心や不屈の生涯は本当に素晴らしいと思えるのだが、しばしば演説の上手さに民衆が熱狂した様子が語られると、わたしは違和感を持ってしまう。演説の上手さならヒトラーの右に出る者はいるまい? 橋下徹氏だって口八丁だ。だいたいがポピュリスト政治家は口がうまいのだ。最近なら、youtubeで見られる外山恒一氏の選挙演説なんて抱腹絶倒のうまさだ。山本太郎氏も実にうまい。
 要するにアジテーターというのは要注意なのだ。大衆をなびかせ扇動するカメジローの演説のうまさは口が上手いというだけではなく、人々が聞きたいことを言ってくれる代表・代理・表象の力を持っていたのだ。そういう点ではカメジロ―の演説には中身があったし、生き方そのものが人心を掴んだ。
 だからこそ、「揺るぎない信念」というものがもつ危うさや、内面の葛藤をもっと描いてほしかった。
 記念館「不屈館」に行ってみたい。 (レンタルDVD)
2017
107分
日本
監督:佐古忠彦
エグゼクティブプロデューサー:藤井和史
テーマ音楽:坂本龍一『Sacoo』
音声:町田英史