吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。

家族にサルーテ!イスキア島は大騒動

 8月初めに見た映画。

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 舞台となったイスキア島の風景が美しい。「マンマミーア」の島に匹敵する素晴らしい陽光と眺望だ。地中海の島は美しいねぇ、一度は行ってみたい。
 で、登場人物が19人もいてその人間関係を把握するだけで映画が終わってしまいそうな勢いの本作は、期せずして島に閉じ込められた親族が引き起こす騒動を描く。親戚が集まってうっかり2泊3日も一緒にいることになった挙句にドロドロの人情劇が繰り広げられるという設定じたいは珍しくない。ありふれた設定だから、作品の出来はセリフの面白さと役者の魅力にかかっている。その点、イタリア語の本作はその面白さがわたしには細部にわたっては実感できないのが残念。役者はみな熱演しているし、何人も目に留まる美女もいる。イタリア本国で大ヒットというのもわかる。
 19人の立場はそれぞれだけれど、移動カメラが彼らの状況を入れ替わり立ち代わり映し出してくれる演出がうまくて、群像劇のアンサンブルが絶妙だ。
 さてストーリーは。イスキア島に住む老夫婦が金婚式を迎えることとなり、親族が祝いにやってきた。老人はかつて社会主義者だったようだが、今では成功した経営者であり、イスキア島の豪邸で悠々自適の引退生活を送っている。経営していたレストランは息子たちが受けついだ。
 昼間のパーティが終わって散会となるはずが、フェリーが欠航したためにやむなく客は全員島に留まることとなった。なんと、その翌日もまた欠航。そうこうするうちに親族一同の問題点が浮き彫りになっていき、ドロドロの大騒動が巻き起こる。彼らの中には離婚したカップルがいて、元妻と現妻がいがみ合う。初恋どうしが何十年も経って再会したというケースでは、あっという間に再び恋に落ちてしまう。まだ若いのにアルツハイマー病にかかっている夫を介護して疲れ果てた美しい妻。借金まみれの甥っ子はもうすぐ子どもが生まれる。十代の男女の親友どうしは恋仲に進展するのか? というように、老若男女が入り乱れて人生の転機ともいえる二晩をすごす。
 浮気、不倫、借金、嫉妬、病気、とまあ問題のオンパレードのような一族だが、考えてみればいずれもありふれた出来事ばかりだ。アッと驚くような展開でもない。だから、カメラや演出の良さはあっても、ストーリーそのものにそれほど新鮮味がないのが残念。しかし逆に言えばありふれているからこそ、観客は容易に登場人物の誰彼に感情移入できるのである。
 最後の最後に笑わせてもらった。こういう終わり方はいいねぇ。結局「問題」の解決は先送りなのである。
 原題は「家ではみんな良い感じ」。非常に含みのあるタイトルだ。 
(2018)
A CASA TUTTI BENE
107分
イタリア
監督:ガブリエレ・ムッチーノ
製作:マルコ・ベラルディ
原案:ガブリエレ・ムッチーノ
脚本:ガブリエレ・ムッチーノ、パオロ・コステッラ
撮影:シェーン・ハールバット
出演:ステファノ・アコルシ、カロリーナ・クレシェンティーニ、エレナ・クッチ、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、クラウディア・ジェリーニ、マッシモ・ギーニ