Blu-rayで見たからなのか、画面がたいそう美しくて心が和んだ。何も起きない淡々とした映画なのに呼吸をするようなリズムで画面が移り変わっていく、そして季節が移ろう様子が心地いい。茶道のお作法の複雑さがよくわかって、勉強になった。
樹木希林の遺作だからか、映画はヒットしたが、そうでなければミニシアターで2週間上映で終わりそうな地味地味作品。原作がエッセイだというのも納得だ。季節の移ろいが美しいのはいいが、残念ながら演出によってそれがわからない。真冬も真夏も空気が同じ。人の息が白く見えることもない。それにいつの間にか20年経っているのだが、その時間の経過もあまり感じない。このあたり、もう少し演出に工夫があってもよかったのでは。いや、そこが狙いかも。人は歳をとっていくが、季節は何度も同じことを繰り返していく。掛け軸が季節ごとに替わり、お茶も変わる。干支茶碗は12年でまた箱から出される。
見終わったあと、実に々しい思いが残るので、見てよかったと静かにほほ笑むような映画だった。こんな風に淡々と日々を過ごしている、実は淡々ではなくその20年の間に愛と別れと死があるのだが、それが人生なのよと言わんばかりに過ぎていく、切なさも哀しみも静かに受け止め流していくようなそんな心のありように触れて、この歳になってやっとそういう気持ちが理解できるようになったと我ながらしみじみしていることに驚く。