吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

先生、私の隣に座っていただけませんか?

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 「夫の不倫に気づいた人気漫画家の妻が新作で不倫漫画を描き、虚実あいまいなその内容に夫が不安と恐怖を募らせていく夫婦の心理戦がスリリングに展開していく」とallcinemaに紹介されていた。まったくその通りで、これは妻から仕掛けられた心理戦にまんまと嵌って嫉妬と不安と自責の念に苛まれていく夫の物語である。

 その妻を演じる黒木華がこれまで見たどの作品よりも愛らしく美しく撮られていて、まるで天使のようなきらめきさえ見せている。そんな可愛い笑顔で夫に復讐するなんて、なんとまあ恐ろしい。でも別に恐怖映画ではなく、むしろ映画全体の雰囲気はコメディタッチなのだ。夫役の柄本佑もまた実に上手くて、この二人のアンサンブルが最高に良い。一方、不倫相手の若き編集者が脳みそ足らんのとちゃうかと思えるような天然にアホっぽい女で、摩訶不思議なキャラクターに作りこまれている。

 自動車教習所が舞台なのだが、これがまた結構な田舎の教習所でなんだかとてものんびりしている。のんびりした教習所でのんびりした教習が行われ、ものすごく不便な片田舎の家で主人公たちは危機的な会話を交わしていく。元々都会暮らしだった彼ら若い夫婦が妻の母親の介護のために一次的に田舎にやってきたというのも面白い設定で、田舎暮らしで交通の便が悪いというのが話の展開上必要なことなのだ。

 というわけで、脚本はよく練られていると思える一方で、何人かの人物が不思議な動き方をするので、ギクシャクした感じも否めない。とはいえ、なかなか面白かった。あっと驚くどんでん返しになった結末は結局どっちなんだろ?(Amazonプライムビデオ)

2021
日本  Color  119分
監督:堀江貴大
製作:中西一雄ほか
脚本:堀江貴大
撮影:平野礼
音楽:渡邊琢磨
出演:黒木華柄本佑、金子大地、奈緒風吹ジュン