吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

3月のライオン

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 1月に見たので詳細は忘れてしまったが、前後編におよぶ長い作品にもかかわらず、引き込まれて見た。

 一度も将棋を指したことがないわたしにしても、その世界の厳しさや美しさが垣間見えて、長い作品にも関わらずのめりこんでみていた。おそらく原作の漫画が素晴らしいのだろう。

 いじめ役の有村架純がほんとうに憎たらしくて、一皮むけた感じがとてもいい。

 して、物語は。主人公の桐山零零は、小学生にして両親に先立たれ、父親の友人宅に引き取られる。たまたまその家の主人がプロ棋士だったことから将棋を教えられ、いつのまにかぐんぐん腕を伸ばした彼は、中学生にしてプロ棋士となる。そして高校生では既にその家も出て一人暮らしをしている。しかし彼には、一人になった瞬間に孤独が待っているのだ。

 孤独と闘う若き棋士と、彼を巡るさまざまな人々の人間模様が非常にうまく配置されていて、全然飽きない。

 少年棋士の成長という点でも、プロ棋士としての成長だけではなく人間的な成長ももちろん織り込まれていく。そして、彼の周囲の人間の恩情や嫉妬などさまざまな感情が渦巻く世界をうまく描いている。

 いずれにしてもこんな勝負事の世界に生きる人々はわたしとはまったく無関係なので、他人事のように見てしまうのだが、こういう厳しい世界の存在もまたありなのだろう。(Amazonプライムビデオ)

(2017)
138分(前編)
140分(後編)
日本

監督:大友啓史
製作:長澤修一、市川南ほか
脚本岩下悠子渡部亮平大友啓史
音楽:菅野祐悟