日本語吹き替え版で。
感動作「ファインディング・ニモ」の13年ぶりの続編。大変よくできた作品で、面白かったのだが、それにもかかわらず途中で若干寝落ちしたのは、やはりよほど疲れているのだろう。
「ニモ」では海の表現に驚いたもので、それがさらに今回スケールアップしていたのでいっそう驚嘆した。これはもう実写に違いない、と勝手に実写認定。
クマノミのニモとその父マーリンも登場するが脇役に過ぎず、今回のキャラクターで光っているのは蛸のハンクである。この蛸が驚くべき擬態能力を持っていて、なんにでも化けられる。タコはそもそも擬態するらしいのだが、今回のようにものの見事なのはスパイ大作戦並みである。このハンクが人間世界にとらわれていることに満足して、外界に(元の大洋世界に)戻ろうとしないのが設定上のミソだ。
前作でもニモが身体上の欠落を伴う存在であったように、今作ではナンヨウハギのドリーが何でもすぐに忘れてしまうという障害を持っている点がこの作品の根本にかかわる部分。なぜドリーのような若い魚が認知症を患うのか、その理由は最後まで明らかにならないが、なにもかも忘れていたのにもかかわらず両親のことだけはかろうじて覚えていた、というのが涙をそそる部分である。しかし、このような感涙ものの部分に違和感を覚えるわたしとしては、家族愛の物語がそもそもあまり好きではない。愛し合える家族ならいいが、そうでない家族だっていくらでもいる。あまりにも「家族」を連呼されると気持ちが冷めてしまうのだが、それでもこの映画は登場人物(魚)たちの個性が際立ち、それぞれが何か欠落や大きな欠点を持っている点で現実の人間世界を鏡のように写し出し、見事だ。
ドリーの生まれ故郷の秘密が眠っていると思われる「海洋生物研究所」のアナウンスの声が「八代亜紀」というところで爆笑。日本語吹き替え版のキャスティングの妙に感心した。
魚のくせにドリーたちはどうやって陸を移動するのか? その難題もなんなくクリアするところが漫画なのだが、山あり谷あり、いや、山あり海ありの波乱万丈のスリルが楽しめた。子どもたちにぜひ見せたい夏のお薦め作。
FINDING DORY
96分、アメリカ、2016
監督・脚本: アンドリュー・スタントン、共同監督: アンガス・マクレーン、製作: リンジー・コリンズ、製作総指揮: ジョン・ラセター、音楽: トーマス・ニューマン
声の出演: 室井滋、木梨憲武、上川隆也、中村アン、田中雅美、八代亜紀、菊地慶、多田野曜平、赤坂泰彦、小山力也