吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

バトルシップ

 さすがはユニバーサル映画100周年記念作品、お金かかってます、リキ入ってます。

 ハワイを舞台にした宇宙大戦争。これまであまたあった宇宙戦争もののええとこ取りした映画で、既視感に満ち溢れているというのにこれが面白いから、なかなかのもの。

 舞台がハワイ、真珠湾なのでこれは「聨合艦隊司令長官山本五十六」へのアメリカ側からの返答映画なのか、と勘ぐってしまう。アメリカ人はいまだに”remember Pearl Harbor" と思っていることを配慮したのか煽ったのかどちらなのか判然としないが、今は博物館となっている、かの戦艦ミズーリ(1945年9月2日、日本の降伏文書調印式場)が登場するなど、太平洋戦争を彷彿とさせるシーンが爆裂。そのうえ、環太平洋合同軍事演習(リムパック! 懐かしいスローガンを思い出す)の前座のサッカー試合で日本のナガタ艦長がアメリカ海軍のホッパー大尉の顔面を蹴り倒すという場面まで用意してあるのだからね、なにをか言わんや。

 しかし、このままの展開では日米決戦が再燃してしまうので、この映画では実に紳士らしく、アメリカ側が日本に譲るのである。そして美しき日米統一戦線により、エイリアンを打ち倒す。めでたしめでたし。いや、そんな結論を急ぐ前に映画の内容を。


 ある日突然現れたエイリアンの戦艦5隻がハワイ沖に停泊。折りしも合同演習中であった日米の戦艦がエイリアンの張ったバリアの中に取り残された。エイリアンは次々と兵器を繰り出し艦砲を加えて米戦艦を撃沈する。果たして地球はこのまま征服されてしまうのか?

 面白いのは、地球に来られるだけの科学力を持っているエイリアンがなぜか割と地球人と互角に戦ってしまうところ。彼らも弱点がいろいろあるらしくて、そこを突かれると反撃できない。どういうわけか温情的なところのあるエイリアンは、地球人を見たからといって見境なく殺戮に走るわけでもない。彼らも地球人の情報が欲しいのだ。なんでも破壊しようとしているわけではなさそうだ。そういった点もあって、地球人はうまくすればエイリアンを撃退できそう! などという期待を持たせて、最後の最後までハラハラさせる、うまい演出。おまけにいろんなところで伏線を見事に回収していくところもいかにもハリウッドの王道映画。

 うちの長男Y太郎が言っていたが、「あの、○○○○の場面がハリウッドらしいよなぁ、ああいう展開にするところがハリウッド映画や」と感心していたように、実に胸のすく場面があるのだ。まともに考えたらありえんやろ〜、そんなこと、という突っ込みを一切寄せ付けない、映画的カタルシスに満ち満ちた素晴らしい場面。わたしは思わず拍手喝采しそうになりました。


 海上での戦艦同士の知恵を絞った戦いも見所満載だけれど、それだけはなく、主人公海軍中佐ホッパーの恋人の理学療法士が退役傷痍軍人のリハビリを行っている山地をも巻き込んで、戦闘の場面を二箇所に分散させたこともなかなかにうまい設定だ。娯楽作の基本はすべて押さえてある、王道映画。最後まで緊張がとぎれず、したがってレイトショーにもかかわらず、わたしも最後まで寝ずに楽しめた。めでたしめでたし。

 エンドクレジットの後にもまだ映像があります。これもけっこう長い。ふーん、やっぱり。

BATTLESHIP
130分、アメリカ、2012
監督: ピーター・バーグ、製作: ブライアン・ゴールドナーほか、脚本: ジョン・ホーバー、エリック・ホーバー、音楽: スティーヴ・ジャブロンスキー
出演: テイラー・キッチュアレキサンダー・スカルスガルド、リアーナ、ブルックリン・デッカー浅野忠信リーアム・ニーソン