吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

トロピック・サンダー

 映画人が自嘲たっぷりに描くコメディ戦争映画。

 これ、「プラトーン」でしょ、ありゃ、「地獄の黙示録」、これまた「キリング・フィールド」かいな、これは「ブラック・ホーク・ダウン」かも。などと、過去の戦争映画への各種のオマージュ/パロディに満ちたコメディ映画。とにかく馬鹿馬鹿しいんだけど、それが何よりも映画界の内情を暴露しつつ自嘲しているところが可笑しい。役者達の命など知ったこっちゃないとにかく儲かればいいんだという非情なプロデューサーといい、役になりきる「名優」の鬱陶しさといい、爆弾炸裂に命をかける爆破係といい、それぞれが映画にかける情熱のほとばしる余り、自分のことしか考えていない、というところがなんともはや。

 トム・クルーズがどこに登場しているかわからなかったのだが、突然「あっ」と気づいたときには思わず苦笑。この映画、彼がいちばん楽しんだかも? とにかくラストシーンは必見です。


 最初のフェイク予告編から始まって全編馬鹿馬鹿しい場面ばかりなんだけれど、単なるコメディにしては火薬を潤沢に使ってものすごいスペクタクルを見せてくれて、なかなかのものです。


 障害者差別あり、ベトナム帰還兵への揶揄あり、人種差別も含めて、とにかくきわどく危険な映画。よく公開したもんですわ。(レンタルDVD)

TROPIC THUNDER
107分、アメリカ、2008
製作・監督・脚本: ベン・スティラー、脚本: ジャスティン・セロー、イータン・コーエン、音楽: セオドア・シャピロ
出演: ベン・スティラージャック・ブラック、ロバート・ダウニー・Jr、ブランドン・T・ジャクソン、トム・クルーズジョン・ヴォイト