吟遊旅人のシネマな日々

歌って踊れる図書館司書、エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)の館長・谷合佳代子の個人ブログ。映画評はネタばれも含むのでご注意。映画のデータはallcinema から引用しました。写真は映画.comからリンク取得。感謝。㏋に掲載していた800本の映画評が現在閲覧できなくなっているので、少しずつこちらに転載中ですが全部終わるのは2025年ごろかも。旧ブログの500本弱も統合中ですがいつ終わるか見当つかず。本ブログの文章はクリエイティブ・コモンズ・ライセンス CC-BY-SA で公開します。

2012-01-01から1年間の記事一覧

ミッドナイト・イン・パリ

観客の教養が試される映画だ。1920年代のパリ、さらに遡る19世紀末のパリ、そこに登場する文化人たちをどれほど知っているか馴染みがあるかでこの映画を楽しめるかどうかが左右される。 婚前旅行のためにパリにやってきた、ハリウッドで若くして成功した脚本…

オレンジと太陽

ケン・ローチの息子ジム・ローチのデビュー作。デビュー作なんだからこの程度だと思うべきか。普通の映画だったが、誠実に作られている。緊迫感に欠けるけれど、不正を告発し闘う人に寄り添いたいという気持ちにあふれた作品だった。イギリス映画らしい落ち…

アメイジング・スパイダーマン(3D)

本作は前シリーズのときより丁寧な作り。雰囲気もぐっと落ち着いている。主人公ピーターがスパイダーマンになる過程を丁寧に描いてある点に好感が持てる。 しかし、あまり3Dの実感がない。わたしにとって「飛び出す映像」というのはアイマックスシアターだっ…

ネイビーシールズ

本物の海兵隊特殊部隊の隊員が出演している、というのが売りの映画。隊員も武器弾薬もすべて本物、というのが最大の売りだけあって、戦闘シーンの迫力はハンパじゃなかった。 役者じゃなくて素人に演技させているわけだから、役者に求めるような「同じ演技の…

素晴らしき哉、人生!

午前十時の映画祭にて。 こんな人情話、今時絶対に作れない。クリスマスの御伽噺として笑って泣いてしみじみする作品だが、これはまさに時代を反映している。大恐慌も戦争も乗り越え、戦勝したアメリカがこれからわが世の春を謳歌しようという時代にあって人…

テルマエロマエ

一ヵ月半も前に見た映画なので既に記憶が…。 大ヒット漫画の実写映画化。原作の世界をよくぞうまく映画にしたものだと思う。 ローマ人役を演じられる顔の濃い日本人役者がこれだけ揃っているのだから、顔の平たい族(日本人)役者ととても同じ民族とは言えま…

わが母の記

奇をてらわずに普通に作られた映画というのがどれほど心和ませるものかが如実にわかる映画。本作を見る前にソクーロフ監督の「ファウスト」を見ていたので、ほっとした思い。ソクーロフはわたしとの相性が極端に分かれてしまう監督で、震えが来るほど好きな…

キリマンジャロの雪

タイトルはヘミングウェイの短編小説とは何の関係もなく、1966年に大ヒットしたフランスのスタンダード曲から取られた。映画の中ではキリマンジャロは映りもしない。南仏の港町マルセイユを舞台に、リストラされた労組の委員長が貧しい若者を救うために手を…

道 〜白磁の人〜

村上春樹が2009年2月16日にエルサレム賞受賞スピーチで「壁と卵」と述べたことの実例がこの映画の中で描かれる。「壁」とはシステム、「卵」とは個人のこと。システムのような強固で暴力的な装置に対して、人間は卵のようにもろく儚い。けれど、壁にぶち当た…

ダーク・シャドウ

先週は井上玲子ちゃんが亡くなり、気持ちが落ち込んでいた(短い追悼文をエル・ライブラリーのブログに書いた)。今月初めに観た「ダーク・シャドウ」なんていうコメディ映画の感想をアップする気にもなれなかったが、よく考えてみたらこの映画はコメディだけ…

コンテイジョン

今日は久しぶりの休肝日。ここのところあまりにも忙しくて体力を消耗したのか、体調が悪くてしんどいので、お酒は止め。かつては鉄の肝臓を誇ったわたしも寄る年波には勝てないのか、肝臓も腎臓も数値が悪くなってしまった。病人になる日も近い。 とはいえ、…

別離

「彼女が消えた浜辺」の見事な脚本に感嘆したファルハディ監督、再び同じようなテーマで描いたこの作品は、前作よりも国際市場を視野に入れたのか、外国人にも分かりやすいようにとの配慮が行き届いた脚本になっている。その狙いは見事的中、国際映画賞を総…

彼女が消えた浜辺

見事な脚本にうなった。 美人ばかり登場する。これまたすごい。一緒にDVDを見た長男Y太郎が「全部美人やなぁ。ペルシャ人は美人なんや。イラン人が美人なんじゃなくて、ペルシャ人が美人なの、わかった?」と偉そうに言ってた。 さて物語は。 イランの中流階…

ルイーサ

これは面白い。したたかに生きる老人達に喝采。 定年を間近にして突然解雇された一人暮らしのルイーサはどうやって生活すればいいのか? ルイーサは墓地の受付係として働いていたのだが、経営者が代替わりし、経営方針が変わっていきなり馘首された。悪いこ…

真夜中のカーボーイ

帰宅途中の駅のホームで長男Y太郎からメールを受信。映画見に行こうという誘いについ乗ってしまって、二人で午前十時の映画祭(2年目は十時だけではなく一日中上映)へ。 見終わってY太郎が「これ、鬱映画やろ。これを見たらもう一本映画を見ようという元気…